どうすれば営業を変えられるのか④
社長は第一級の「態度力」を築け
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◇社長のありよう
 私はかつて営業の仕事を楽しみ、いまは営業コンサルタントの仕事を楽しんでいる。睡眠もそこそこに年中無休でのめり込んでいる。本書『御社の営業をよくするヒント』では、場数を踏むなかで確立した営業の数字を伸ばすための基本を著した。性格は読み物ながら、読者に実務の急所くらいは示したいと考えた。本書の最後に、営業の数字したがって企業の業績と緊密に関わる「社長」を取りあげ、そのありようについて述べる。
 私は再建屋を任じているが、クライアントには業績が良い企業も多く、業績が中間の企業はあまり含まれない。ゆえに、私は両極端の会社を比較しながら観察することができる。これは幸運だった。失礼な言い方を許してもらえば、実に面白い。

何が目標達成や業績向上に寄与するか、何が成長持続や社業発展に寄与するかが浮かびあがってくる。

 それが営業コンサルタントとしてのノウハウの核心を成している。
 業績という結果が逆ということは、企業という原因が逆ということである。そして、その主因となるのが中小企業においては「経営者」だと気づいた。
 私みたいに能力が劣るコンサルタントは、クライアントをどれくらい選べるかで食べていけるかどうかが決まる。

自分で業績をよくできないので、業績をよくできる社長を選ぶ。

 私がつかんだ商売のコツはがっかりするほどシンプルだった。
 そして、コンサルタントはクライアントの業績をよくできるなら仕事に困らない。頭は小学校の高学年程度で大丈夫。私は直江津小学校で習った「加減乗除」のほかは忘れてしまった。が、これといった不都合を感じることもなく仕事を続けている。それどころか勘違いが甚だしい社長から「先生」と呼ばれる。何とありがたい。
 コンサルタントは学歴も資格もないほど、知識に邪魔されずに本質を見出しやすい。私は、自己投資を行えない貧乏人に適した職業だと思う。両親に感謝している。
 もしもあなたに失うものが何もないとするなら、寄り道ついでに挑んでみる価値がありそうだ。実験と冒険は人を別次元に引きあげる。

◇経営相談
 その私が還暦以降、とくにエネルギーを注いでいるのが社長を対象とした無料・個別の「経営相談」である。中小・中堅企業、それも地場企業、しかも内需企業が中心になる。1社2時間、和田創研主催セミナーの終了後のほか、平日の夜間ときに日中、希望が寄せられれば休日・祝日も相談に応じている。老いによる衰えに負けたくない。
 経営相談に関してはおもに業績が悪い企業、それも追い詰められた企業が訪れる。私は、売上形成もさることながら利益確保がままならない経営者と向かい合う。
 たいてい会社を畳むわけにいかないというプレッシャー、不甲斐ない数字に対するストレスに押し潰されそうになっている。心の不調を疑わせる方もいる。吐き出す機会がなかったのだろう。こちらが黙ってうなずいていると話が止まらなくなる。

愚痴の行き着く先に、儲けられない社員と儲けさせない顧客への恨み辛みがある。

 その延長線上に、大きな赤字や借金(個人保証)への不安があることも…。
 私が経営相談を通じ、どん底期を脱したはずの日本経済で一段と進んでいると実感させられるのが企業の2極化である。同じ業種や同じ市場でも業績の格差は開くばかりだ。規模が小さくても勝ち組は存在する。すべての会社が悪いわけでない。
 なかでも長期にわたる業績低下、規模縮小に陥る経営者には見事な共通点がある。

「自分以外がダメ」ということ。

 私は職業柄、冷静に耳を傾けているが、そうした社長の話は同じになる。社員がダメ、やがて営業がダメ、ついにコンサルタントがダメとなってしまう。社員を採用したのも、社員を育成したのも、コンサルタントと契約したのも、すべて自分ということを忘れている。即戦力採用の幻想に溺れて社員を育成しない社長もいる。
 私のような変革・再生系のコンサルタントが絶対にやってならないのは、長らく結果を出せない社長の言うことに首を縦に振ることだ。業績不振の主因となっている社長を肯定しては、その回復も向上も成し遂げられない。食い詰めたコンサルタントが仕事欲しさにやることであり、私はもっとも不誠実な対応だと考えている。

私はもっぱら業績不振という問題の解決を請け負っている。

 それは「問題点の把握」と「解決策の実行」から成り立つ。大事なのは、問題点の把握であり、私が考えるそれと社長が考えるそれのすり合わせである。

原因を外すと、解決策は効果を上げられない。

 端的に述べれば、私は社長が原因と考え、社長は社員が原因と考えると噛み合わない。
 業績不振が数年も続くとしたら、原因は社長を置いてほかにない。オーナー社長なら決定的である。私は分かりやすく、30名以下の零細企業では3百パーセント、百名以下の中小企業では2百パーセント、3百名以下の中小企業では百パーセントそうだと説いてきた。
 実は、問題点を突き止められるなら、問題解決は過半が達せられる。解決策を打つことはそれほど難しくない。そもそも社長は手をこまぬいていたわけでない。自分なりに懸命に業績をよくしようとしてきた。原因を誤り、無効な努力を続けてきたにすぎない。
 私はこれまでに遭遇した同様の事例と経験に照らし、経営相談で根拠のない″言い分″を退ける。社長は自分の思い込みに縛られ、自社の現実を直視できていないので、問題解決に取り組む以前の状態に留まっている。私が率直に指摘すると社長が憤慨し、それきりになってしまう。何とか力になりたいと願っているが、助けようがない…。

他責にする社長は、他責にする社員をつくる。

 社員を取り換えたい、入れ替えたいとの誘惑にしばしば駆られる。どん底でもがく社長は同じところでつまずいているというのが、私の結論である。「社長を首にすることのできる社員はいない」。これを腑に落としてほしい。

◇相談内容
 もう一つ、私がとりわけ経営相談において気になることがある。それは社長の表情や口調、仕草などと一体になった相談内容である。

平たく言えば、相談内容にならないことを持ち込む。

 おそらく私は暇人と勘違いされている。だからといって、私が怒っているということは断じてない。経営相談こそ、私が洞察力を磨き、「人間と経営」そして「社長と業績」を学ぶ最良の機会になっている。いいコンサルタントであろうとすれば苦行を積み、精進に励むことが不可欠となる。こちらが本来、相談料を払うべきかもしれない。

「我以外皆我師」「我以外皆我客」。

 「我以外皆我師」は大衆文学の代表作家、吉川英治の名言である。その足跡ならではの平明な人生哲学といえる。何と謙虚なのだろう。人から学ぼうとする真剣な眼差し、学んだ人への深い感謝が感じられる。私が大好きな言葉である。
 私はやがて「我以外皆我客」という言葉が自然に浮かんだ。これはフリーランスとしての職業人生の実感に基づく。ここではっきりしておきたい。

和田創は暇人である。

 社長は相談内容にならないことを経営相談にどしどし持ち込んでいただきたい。大丈夫、ほとんどが凡人ということくらい、私は承知している。なお、時間次第だが、深い感謝の印として仕出し弁当をおつけしている(←いいね!)。
 話を戻し、相談者は皆それぞれ。
 しかし、その社長に限れば、同じところで思考が堂々巡りをしている。正確に述べれば、冷静な思考でなくドロドロした感情が堂々巡りをしている。自分の力でどうにもならないか、どうにかするには地獄を味わうことを引きずる。

頭と心のエネルギーの大半が後ろ向きに費やされている。

 これでは結論を導き出すまでに消耗し、前へ進めない。社長は「会社を豊かにするにはどうすべきか」「社員を幸せにするにはどうすべきか」にフォーカスする。そのほかの事柄に引っ張られると脇道に逸れる。私に言わせれば、余裕がありすぎるから余計なこと、余分なことが頭と心に浮かんでくる。いまどきの経営にそんな贅沢は許されない。

社長よ、視点を高くし、視野を広げよ。

 実際、そうした相談内容のほとんどが些末な事柄である。
 これは真面目で優秀な社長にも見受けられる。概して経営を熱心に学んでおり、業績が悪いということでない。しかし、自分の持つ能力が自社の成長や発展に結びついていない。
 私は話に耳を傾けながら思う。

「もっと会社が大きくなっていいはずなのに・・・」。

 私が行う経営相談に「箸にも棒にも掛からない社長」が訪れることはない。「残念な社長」が訪れることがあり、しかもその比重が高まっている。

◇思考の癖
人はだれしも気質や性格という特性を持つ。それが環境と相まって思考の偏りとなり、さらに思考の癖となり、やがて人生のなかで幅を利かせる。

客観性が欠かせない経営者は「思考の癖」がまま弱点となる。

 頭も心もそれに支配されかねない。

そして、思考の癖がもっとも顕著に働くのは「人」に対してである。

 したがって、そうした社長の経営相談では、自身が引っかかる社員に集中する。オーナー社長、とくに後継者だと弟などの身内に集中することがある。妻や子も変えられないのに社員を変えるという絶望的なことに苦悩する自分を突き放して眺められない。
 私は明治大学5年中退という体たらくだ。お陰で「頭が悪い」ということを職業人生の出発点にすることができた。悪い頭を悩ませても克服できない事柄に端から関心がない。貴重な時間と労力をロスするだけだ。それ以前に、そんなことを考えていたらフリーランス(プランナー)として生計が成り立たず、家族を路頭に迷わせた。
 生意気を言えば、私は面談で相対する社長をあまり見誤らない。実は、若い頃から大手企業でも凋落や破綻の臭いを嗅ぎ取り、それが現実に起こっている。この社長は会社を畳む、会社を潰す、息子に借金を背負わせるなど、近い将来が思い浮かぶ。
 私が近年、満足すべき実績を残しているのは、それが確実な企業しか引き受けなくなったからだ。コンサルタントとして駆け出しの頃は自分の力で営業を何とかする、業績を何とかすると気負って乗り込んだが、世の中にそうでない企業もあると悟った。
 私は「再建屋」と称しているが、それを成し遂げるのはクライアントである。経営権どころか人事権を持ったことはなく、しかも常駐型でないので当然である。そして、その見込みがあるかどうかは社長にかかっている。大手企業でも同じ。
 経営相談では、思考の癖という落とし穴に嵌まったり、迷路に迷い込んだりした社長が増えている。例えば、それは周りに振り回され、決断を行えないという形に表れる。

命令や指示できっぱりと動かすだけなのに、社員を懸命に説得して回る社長が珍しくない。体がいくつあっても足りない。

 意思決定とその実行という重大な使命が覚つかない。私は、今日の経営者には根源的な能力が欠かせないと考えるようになった。それが「態度」である。

◇社長自身の再生
社長が叶えるべきはたった一つ、高くて大きい志に根差した「理念」を実現し、業績を向上させることである。しかし、肝心の自分がふらつく。
では、そうした社長は見込みがまったくないのだろうか。案外、そうでもない。

ちょっとした覚醒と覚悟で社長が再生することがある。

 そうした気づきを得る機会、腹を固める機会に恵まれなかった。
 私はそのきっかけを与えることが再建屋稼業の醍醐味と思っており、病みつきになった一因である。これまでに仕事でおつきあいした社長はそうだった。なかでも短期間で業績の劇的回復・向上を果たした社長は別人になった。
 再建屋の立場で述べれば、数字をよくしようとするよりも社長を変えようとするほうがたやすい。経営者の立場で述べれば、自分を変えることが数字をよくするスタートラインになる。

その決め手が望ましい「態度力」の養成である。

 先に述べたとおり、私は業績が正反対の社長と相対する。実は、その瞬間に受ける印象が正反対であり、それは経営相談が進むとともに一層鮮明になる。
 好業績を続ける社長は全身から漂う「気配」がまるで違う。こちらの背筋がおのずと伸びるのだった。そうした力感と一体になった気配を態度と呼ぶことにした。私はやがて企業の優劣を分かつのは社長の「態度力」という結論にたどり着いた。

経営に関する知識や手法は然るべき態度に支えられて力に変わる。

 なかでも一代で会社を大きくする創業社長は素晴らしい態度力を備えている。
 この態度力は企業を取り巻く環境が厳しくなるほど重要になる。社長が経営の本質に肉薄しなくては生き残れない。まして勝ち残れない。あなたが部隊を構成する兵士だとして、態度の定まっていない大将のもとで前線に飛び出すだろうか。
 私は変革や再生の仕事を引き受けるに当たり、社長を筆頭とした当事者の態度を見る。教育指導に責任を負えるかどうかは先方による。私は責任を逃れようとしているのでない。態度がなっていないと、時間と費用がかかるわりに成果を上げられない。それは私とクライアントの双方に不満やしこりを残す。せっかくのご縁は互いに感謝できるようでありたい。

◇態度力とは?
 最後の最後に、態度力について説明をいくらか補う。
 まず、態度とは、物事に臨むときの心構えや身構えのこと。当人の根っことなる思想や姿勢の持続的な傾向である。一人ひとりを判別できるほど固有の全身表現となる。
 行動が成果を生み出す。行動は原因、成果は結果という関係だ。社会人においては当人が知っているとか、当人が行えるとかは問題でない。

地位や立場を問わず、「行動」に表したものだけが能力である。

 実際の仕事に落とし込めないと意味も価値もない。周囲の信頼も評価も得られない。
 そして、行動に重大な影響を及ぼす要素が「態度」である。気質や性格に即した静的なものと捉えやすいが、行動を促す動的なものと考えよ。
 望ましい態度は自ら意図して育てられる。先天的な気質や性格と異なり、態度は後天的に形成される。そもそも態度は自分が身を置く環境に揉まれるなかで培われた。

一般に、「成果=能力(知能・技能)×意欲(やる気)」とされる。

 再建屋の私がおおいに憧れるとともに心の底から敬う京セラの稲盛和夫、日本電産の永守重信もおそらく同様の趣旨を説いているが、これは間違い。
 なぜなら、やる気はそのときどきの状況により変動する。「山あり谷あり」の職業人生のなかで揺れ動く。いや人生のなかで揺れ動く。失恋や離別、病気や介護など、個人や家庭の事情が仕事にまで影響を及ぼす。例えば、結婚をきっかけに仕事を頑張る。この理屈だと私たちは結婚しつづけなければならない。どうですかぁ~。
 私は「意欲」でなく「態度」と捉え直したほうが的確だと考える。「やる気を失う」という言葉をよく耳にするように、それはもろく当てにならない。

すなわち、「成果=能力(先天性)×態度(後天性)」である。

 一度築いた態度は堅固であり、一生の財産となる。「成果=能力×意欲」の最大の問題は、モチベーションの落ちない偉人が言っていることだ。凡人はそうでない。
 態度は行動の覚悟と密接不可分のたたずまいであり、態度力は果敢な行動へ踏み切ろうとする能動的な態勢である。迷いと憂えは行動を鈍らせる。
 経営は自分という人間が行う。社長はその人間の基礎となる態度力を養え。業績不振企業の社長は負けるべくして負けている。

業績は結果であり、社長が原因である。

 なお、私は「社長の態度力」と題する公開セミナーを行っている。
 経営に臨む大本の思想と姿勢により、成長や発展が決定づけられる。そうした働きようの根幹を成すのが「態度力」である。成功に直結する条件と言い換えられよう。
 本セミナーでは、社長が身につけていないと努力が空回りし、苦労が報われないという自律的能力を示し、その養成法に触れる。単純力、執念力、理念力、目標力、啓蒙力、戦略力、吸引力、感謝力、屋脱力、希求力、原点力。自分は何が足りないか、自分は何を行うべきか、具体的な答を見つけられる。
 また、部長や課長、所長を対象に「上司の態度力」と題する公開セミナーを行っている。
 企業の業績が社長次第であるように、部門や拠点の業績は管理者次第である。
 会社の数字は社長の″通信簿″であり、それをよくするには「自己変革」が先決となる。社長と上司の役目を兼務しなければならない中小企業の経営者には両方のセミナーを受講するように勧めている。第一級の態度力を築いていただきたい。

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