どうすれば営業を変えられるのか②
どうすれば営業を変えられるのか
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◇営業立て直しのポイント
 社長はどうすれば営業を変えられるのか。社員の営業活動の具体的なあり方とやり方は、私が長らく打ち込んできた「提案営業」のセミナーなどに譲るとして・・・。
 私は当初から変革系のコンサルタントだった。それは最初の営業本『提案営業成功の法則』(日本実業出版社)に見て取れる。自分の最大の強みがそこにあったのだろう。
 しかし、この「営業変革」が一筋縄でいかない。私がコツをつかむまでの失敗の経験なども踏まえ、営業立て直しのポイントを明らかにする。
 1.研修の実施。
 営業担当者へ教育指導を行うことが最重要である。

古いやり方に代わる新しい手法を知らないと変えようがない。

 収益伸長に必須となる「開発営業」の取り組みに用いるために「提案営業」を習得させる。社員が携わってきた「通常営業」と特性が対照的であり、営業のあり方もやり方も正反対になる。ルーティンにどっぷりと浸かってきた営業担当者にとり、思いも寄らないはずだ。

普段やっていることは提案営業でやってならない。

 例えば、商談、会社説明、商品説明、見積書提示など…。
 だからこそ、提案営業に関する教育指導の実施が営業立て直しの前提になる。しかし、いったん会社や職場に定着してしまえば、それが営業の文化や風土となり、新しい社員に引き継がれていく。

自らも営業に携わる社長が情熱と手間をかけて研修を行う。

 私は社長が社員に教えるのが一番と考えている。言い換えれば、社長が社員とともに学ぶのが理想と考えている。皆で変わるのだ。ただし、社長が自らの営業活動を行うか、社員の営業活動を助けるか、何らかの形で営業に関わっていることが条件である。
 「提案営業」をテーマとした市販本がいろいろ刊行されており、よくまとまったものが何冊か見つかるだろう。また、「提案営業」という言葉を書名に使っていなくても、中身がソリューションという本がある。それをテキストにし、何回かに分けて勉強会を行う。

営業本や営業セミナーを選ぶ際に最重視すべき基準は、著者や講師の営業経験の豊富さとそれに基づいた見識の深さである。

 言い換えれば、「経験の知恵」をどれくらい持っているか。他人の本やセミナーから学んだ知識を取りまとめた類(たぐい)は避けよ。また、なるべく外部講師に頼らない。
 私が約20年間の教育指導のなかで、業種や規模を問わず、もっとも手がけたのが代名詞になった「提案営業研修標準講座」である。だが、還暦を過ぎた頃から全国を飛び回るのが厳しくなり、せっかくの依頼をお断りすることが多くなった。とくにめまぐるしい長距離移動に耐えられない。老いを痛感させられる。
 そこで、本コースの講師用と受講者用の教材一式を「提案営業研修教材キット」として提供している。最大の謳い文句は「いま届き、いま行える。」「プロ講師いらず。準備・練習いらず。」。私がわりと最近まで提案営業一筋だったので当然だが、和田創研の社員教育教材におけるヒット商品である。
 また、企業研修を大幅に減らした分、それを「提案営業研修公開コース」で再現している。中堅・中小企業、地場企業の社長や役員、精鋭などが参加してくださる。
 2.管理の見直し。
 私は業績の低迷や不振に苦しむ社長や営業管理者に繰り返し説いてきた。

営業と管理は一体である。

 売り上げづくりに危機感を持つ営業担当者が営業のあり方ややり方を変えようと思っても、管理が変わらないと変えようがない。
 営業再建屋としての私の結論を述べれば、営業変革を阻害しているのはたいてい社長であり、営業管理者である。そもそも業績不振の原因、したがって責任は、「下」を率いる「上」にある。結果を出せない管理を見直さなくてならない。

ずばり、「量的拡大」の管理から「質的充実」の支援へ改める。

 具体的には、案件の進捗(プロセスマネジメント)に応じ、組織ぐるみ(プロジェクトマネジメント)により、現実の数字がつくられる面談そのものの「有効度」を引き上げる。

社員が売り上げづくりに奔走しているのに目標未達が起こるのは、頑張りの有効度が低いからだ。ほかに理由はない。

 先に述べたとおり、どこのだれに働きかけるかにより「営業生産性」がまるで違ってくる。ここに管理の軸足を置く。が、それは支援の重視を意味する。旧来の管理と真逆である。

「営業生産性」とは、社員の懸命な「営業努力」がどれくらい合理的に「営業成績」に反映されるかということ。

 社長が本気で成長持続を望むなら、企業としてその数値化を検討すべきだ。私は「営業生産性指標」と呼んでおり、業績テコ入れの際にはこの尺度をかならず用いている。自分では営業における「発明」と思っており、「社長の打ち手」で詳しく述べている。
 念を押せば、行動と表裏の関係にある管理を改めなくては「営業変革」をスタートさせられない。例えば、社長が提案営業という「質」を掲げながら、社員の訪問件数という「量」を問う。あるいは、現場(上司)が部下の訪問件数という「量」を問う。つまり、社員を左に向かせ、そのまま右に進ませる。

兵隊が後ずさりするので敵にやり込められる。営業担当者が後ずさりするので業績を悪くする。

 私はこれまでに「戦略」と「戦術」が正反対を向いている企業をたくさん見てきた。力が打ち消しあったり、前線が混乱したりする。目標未達は起こるべくして起こっている。そもそも売れないなどというのは結果でしかない。私はそうした致命的な状態を解消したくて「営業管理者セミナー」に力を入れている。実際の参加者は社長などの取締役が多い。
 3.目標設定の見直し。
 社長が営業担当者に思い切り高い数値目標を示すことはかなり有効である。営業のあり方とやり方を変えざるをえない。そうでなくてはとても届かないからだ。
 例えば、目標予算を対前年度で5パーセント増に設定すると、営業担当者は達成へ向けてしゃにむに頑張ろうとする。旧来の意識や発想、手法の延長線上で努力することになり、それでは結果が出なかったはずだ。

ストレッチ目標の設定は、社員に営業変革を促す。

 ただし、社長による社員への支援が前提であり、社員への研修が必須となる。すでに述べたとおり。なお、評価の尺度を売り上げから利益へ切り替えると、商談の付加価値に関心が向かうため、営業が変わるうえで一助になる。
 私は業績がじり貧のクライアントに関わる際、たいてい対前年度で20~50パーセント増を目指している。この数値自体に大きな意味があることを経験上知っているからだ。
 また、「提案営業研修公開コース」では、目安として数倍から十数倍の売り上げ増を目指している。私の実感を述べれば、営業力をちょっと伸ばすのはとても難しい。
 4.対象の限定。
 営業変革では、すべての関係者を巻き込むのが基本であり理想である。それにより全社的な「ムーブメント(運動)」に高められる。効果も早く大きく表れる。
 しかし、それにこだわりすぎると、営業立て直しを遅らせかねない。上層部の合意形成や部門間の調整に手間取りそうな大手企業なら、あまり欲張らないほうが結果はよい。中堅企業でも社歴が長いと、幹部の立場や面子、セクショナリズムがネックになりやすい。

しっかり変われるところから、きっちり変える。

 例えば、会社の収益の柱となる事業、現状に危機感を強める部門に絞るとか、精鋭を集めてチームをつくるなどだ。その中心は若手で有為の担当者と管理者だろう。彼らがトリガー(引き金)となり、営業変革をリードしていく構図である。
 私にとりオーナー企業の営業立て直しが断然楽なのは″鶴の一声″で決まるからだ。

社長が覚悟を決め、本気になった時点で成し遂げたも同然である。

 何を隠そう、私が社長を対象に無料・個別で行う「経営相談」はそれを見極める機会にもなっている。話がややこしくなるので営業再建屋と名乗っているが、私でなく、かならず顧客が立て直す。責任逃れをしようと思っているのでなく、それが真実である。
 サラリーマン社長のなかには、社内情勢の悪化ですぐに腰砕けになる人もいる。私の眼力がなかったということ。むろん己の首をかけて臨む猛者もいる。いったんこうと決めたら頑固で、周囲の雑音や社内の逆風にまったく動じない。

親会社から社長が送り込まれる子会社の立て直しはかなり難しい。

 高齢の社長はたいてい会社人生の花道として地位を与えられている。波風を立てたくないというのは、心情として分からないわけでない。
 そうでない社長はたいてい3年前後で親会社に戻るか、別会社に渡る。最初の1年は様子見になりやすく、経営でも製造でも営業でも大ナタを振るうには時間が短い。後任への引き継ぎを円滑にすることを優先せざるをえない。むろん例外もあり、子会社を劇的に蘇生させ、親会社に役員や社長として戻った人もいる。

私は、不退転の決意を固めた人間の強さに目を見張ってきた。

 人生も、経営も、営業も、捨てたものでないとつくづく思う。
 5.給与体系の変更。
 私はこれに関して専門家でない。ただし、社風や経営状態なども踏まえ、慎重に判断を下さなくてならないことくらいは分かる。何より社員とその家族の生活がかかっている。
 クライアント自身の判断により、営業成績の賞与や給与への反映度・還元度をいくらか高めた事例がある。営業変革の促進にかなり寄与した。

「成果給」へシフトさせることは営業立て直しに有効である。

 私が耳にした事例を示そう。前年割れに苦しむ販売会社はまず賞与に、やがて給与に差をつけた。それでも縮小均衡を止められずに経営が瀬戸際になり、ついに「フルコミッション」に踏み切った。稼ぎの悪い人は職場を去るしかない制度である。
 それを機に営業担当者が働き方を必死に考えはじめた。「これで成果を上げられるか、成果給を楽しめるか」。リターンの大きい重要案件に全力を傾けるようになった。
 しかし、この事例はかなりひっ迫しており、非常時に限った打ち手と考えるべきだ。行き過ぎた成果給は中期的にいい結果を招かない。

我が物顔で数字がのさばり、社員のつながりを断ち、空気が殺伐とする。組織が壊れるのは時間の問題だ。副作用がひどい。

 私自身は数値目標をノルマとすることにさえ否定的であり、また営業再建ではリストラを前提にしていない。
 以上。複数の打ち手を併用することで営業立て直しを迅速かつ確実に成し遂げることが可能になる。私は正直、単発の具体策では自信を持てない。1~3はかならず用いている。
 また、「営業プロセス」の設定のほか、「営業戦略」の策定もかならず行っている。

営業戦略とは、勝つために何をすべきかを表したものであり、成果が上がっていないとすれば、営業戦略が無効だったということだ。

 勝つとは、目標達成のこと。営業戦略そのものが営業変革はもとより業績向上をもたらす。その策定次第で営業の数字は跳ねあがる。第1章で紹介した事例もそれに近い。

頭のいい人たちが毎年「経営戦略」を策定しながら、負けつづけているユニークな企業もある(←ホント)。

 縮みっ放しの大手企業や名門企業に珍しくないが、社長や経営企画室が「戦略が何か」をまったく解していない。

戦略は頭で考えた瞬間にお仕舞い。腹で固めるものだ。

 成果を上げられない戦略は尖っておらず、社員を突き動かせない。その重要性と勘どころについても「社長の打ち手」で明快に説いている。
 戦略の策定では「実行の担保」と「変革の担保」が必須だ。まして多忙を極める営業、習性に浸かる営業に対しては…。ならば、やるしかない、変わるしかない。

◇企業存続の真理
 縮小市場や不況期では、営業担当者を頑張らせて成果を上げようとの目論見は往々にして外れる。バブル崩壊後の断続的な前年割れ、規模縮小がそれを証明している。

私たちは「営業を変えないかぎり数字を伸ばせない」と胸に刻み、提案営業を着実に実行へ移そう。

 とくに優秀な社員は「頑張らない」と心に誓うこと。「変わる」お手本になるべき。
 現実には、小さな顧客から小さな注文を集める営業活動に甘んじたいという社員がいる。頑張るのは、彼らに任せればすむ。言い換えよう。

結果を出せないのに変われない人、変わりたくない人は十倍頑張るべし。人それぞれ、人生いろいろ。

 余談。おもに公開セミナーでの出来事。
 営業管理者が講義中などに悩ましげな表情で「頑張らない部下はどうすればよいですか」。「頑張らせなさい」と私。20代後半の営業マンが休憩時間に得意げに「先生、自分も本はまったく読みません」。「読書は大事だぞ」と私。30代半ばの営業マンが自慢げに「私も勉強したことがありません」。「勉強は大事だぞ」と私。

いったい何のために頭を乗っけているのか。言葉の上っ面に反応し、意図を考えることのできない参加者が増えた。

 おそらく読者についても同じ。戦後の「知識偏重?点取り教育」の弊害は職業教育の現場で深刻に表れている。薬に副作用があることは知っていても、知識に副作用があることをわきまえている人は、高学歴の若手や後継者ではそれほど多くない。

私が再建屋として悟ったのは、営業の仕事では知識はまま「猛毒」になるということだった。

 営業本を読んだり営業セミナーを受けたりするのは、行動の後でよい。走りっ放しだった私は自分に「本くらい読め」「勉強くらいしろ」と叱っている。が、言うことを聞かない。

念を押すまでもなく、私は職業人生そして人生においてもっとも大事なのは「頑張り」だと考えてきた。

 とかく根性論が幅を利かす営業系の会社や職場では、不毛のガンバリズムを排除すべきだというのが、営業再建屋としての信念である。
 私が学生時代に脳裏にすり込まれた言葉がある。進化論で名高いダーウィンが著した『種の起源』の一節、環境適応の件(くだり)は企業存続の真理を表している。

強いものが生き残るわけでない。優れたものが生き残るわけでない。変われるものだけが唯一、生き残りを許される。

 けだし名言だ。かつて全盛を誇った恐竜はいまや跡形もない。どこか名門の大手企業を見るようである。
 実際、変人の私はしぶとく生き残った。どうですかぁ~。長いおつきあいの大手企業の社長が料亭で私の顔をまじまじと眺めながら、「変人だね」とつぶやいた。
 人(生命)は保守的なので、変化への勇気が大切になる。

社長は自社の勝ち残りを見据え、変革の修羅場に身を投じよ。

 ご関心があれば、「皆、覚悟せよ。」にお目通しいただきたい。

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