どうすれば営業を変えられるのか①
頑張るのはもうやめよう
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◇営業の強化
 私は長年、クライアントにおける営業の強化を実現しようと努めてきた。
 が、耳慣れた「営業強化」という言葉は非常にあいまいだ。その意味をはっきりさせなくては、単なる「労働強化」で終わってしまう。現場にとりこれほど迷惑な話はない。

私が一貫してこだわったのは「営業生産性」の向上である。

 それを可能にする営業とはどのようなものかを説いてきたつもりである。なぜなら、それなしに高収益体質への転換を果たせないと確信したからだ。そして、もっとも有効な手法として、私がクライアントに根づかせてきたのが「提案営業」である。
 この間、家庭では″共働き″が普通となり、家事を分担しない夫は許されなくなった。社会の変化に対応すべく、企業は社員が仕事と生活の両立を図れるよう、労働環境の改善に力を注ぎはじめた。これが「ワーク・ライフ・バランス」の取り組みである。

しかし、多くの会社や職場ではいまだに営業職は労働時間が長い。

 それは仕事の特性上やむをえないと片づけられる時代でない。
 社員が形ばかりの「営業手当」を宛がわれ、それと引き換えに連日のように夜遅くまで縛られる。私はさまざまな企業に伺い、営業担当者の重い疲弊を感じてきた。

なぜそこまで働かなくてならないのか。たいていは売り上げが慢性的に足らないせいだ。

 長時間労働であったとしても、会社が高収益で自分が高収入なら我慢もする。が、会社が低業績で自分が低賃金のままでは浮かばれない。営業担当者は働き方を疑うべきだ。
 しかし、長時間労働の原因を本人だけに求めるわけにいかない。私が見るところ、社長にも原因がある。例えば、成績優良者さえも定時で退社しにくい雰囲気が漂う会社や職場がある。また、社長(上司)が長く働く社員(部下)をかわいがる。それだけで「あいつは頑張っている」と錯覚してしまう。さらに、残業や休日出勤の多さを自慢する風潮も残っている。
 結局、社長をはじめ、営業関係者のほとんどが長年の意識や発想を変えられない。

人は皆、豊かで幸せになるために働いている。

 社員も社長も同じ。今日、個人も企業も生き抜くことは容易でないが、全員がこうした当たり前の労働観、職業観を大切にする必要がある。私は自分がそうなりたいとの思い、家族をそうしたいとの思いを胸に、19歳から働き方を探りつづけてきた。

「ワーク・ライフ・バランス」の真剣な追求が営業生産性の向上をもたらし、業績の回復や拡大につながる。

 結果として、流動性の高い営業部門や営業拠点において優秀な人材の確保も叶う。おのずと勝ち残りへの好循環も生まれる。
 営業職の長時間労働はおそらく問題の根が深く絡まり合っている。なかでも業績の好転と切り離して解決できないのは確かである。営業担当者は数字責任を負っており、それを果たしていないとしたら、やはり営業活動を改めるほかにない。

営業の強化、営業の立て直しは、生産性の向上に行き着く。

 私自身は生産性の向上を通じてしか、「営業が強い会社」をつくれないと思う。
 それなしに社長が「営業が強い会社」をつくったとしても、そこで働く社員は心身の消耗が激しい状態に変わりがない。営業の仕事の誇りと喜び、そして自らの豊かさと幸せを実感するに至らないのでないか。

◇営業立て直しの考え方
 そこで、営業を立て直すうえで根源となる考え方とそのポイントについて述べる。まずは、営業立て直しの考え方を明らかにする。

売り上げづくりが厳しいと″根性論″に走りたくなる。

 社長が社員にゲキを飛ばすとか、社員が自分に気合いを入れるなどだ。追い詰められた会社や職場でよく目にする光景である。それでダメだったから、いまの低迷があるというのに…。
 私が打ち込んできた「提案営業研修」では、会社の繁栄のために社員の幸福を犠牲にすることはしない。勝ち組の企業と個人を目指しており、どちらも貪欲に叶えるのだ。とはいえ、営業担当者の意欲を引き出すことが先決であり、その結果として競争優位を手に入れる。

ES(社員満足)に基づいてCS(顧客満足)を叶える。

 社員が豊かで幸せでなくて、顧客を豊かで幸せにできるはずがない。提案営業の根っこにある考え方である。なお、ESは「従業員満足」とするのが一般的だ。
 私が業績の苦しい企業に伺い、目の当たりにしてきた現実は、営業担当者の涙ぐましい頑張りだった。私は企業研修では声を大にして受講者に説いている。
 「頑張るのはもうやめよう」「あなた方はこれまでだって頑張ってきたでないか。だが、グラフを見よ。その結果がこのザマだ」。

「いい加減目を覚ませ。頑張るのでなく変わろう」と。

 顧客の引き合いや注文が増える景気の上昇局面は別にし、やみくもに頑張ったところで徒労に終わる。それに人はずっと頑張りつづけることができない。

社長は営業担当者に″ガンバリズム″の限界を周知させ、そこからの脱却を決意させよ。

 ついては、社長自身が変わることが先決である。売り上げの不足を労働時間の増加でカバーさせようという気持ちを捨てる。

社員一人ひとりが「収益最大化」の観点から、自分の限られた営業力をどのように使うかを考えるのが「提案営業」である。

 言い換えれば、自分がどのように動けば売り上げが伸びるかをつねに考える。それにより数字責任を果たす。先に述べた「生産性」の概念を営業活動に導入するわけだ。
 読者は「売上=商談単価×商談件数×商談成功率」の数式を思い起こしてほしい。これを念頭に、予算と権限の大きい顧客に対して「提案営業」を行い、商談単価と商談成功率の向上を成し遂げる。念を押そう。

面談相手の予算で商談単価が決まり、権限で商談成功率が決まる。

 いかなる営業活動も顧客との接触から始まる。どこのだれに働きかけるかが第一義である。やはり営業は「行動の度胸」なのだ。
 ちなみに、商談件数は労働時間を長くすることで、わりとたやすく増やせる。しかし、そちらに走るべきでない。私が大切にする提案営業に反する。当事者に染みついた営業活動を変えることが立て直しのスタートラインとなる。
 なお、社長は営業会議で収益の向上について話し合うときには、労働時間の短縮とセットにせよ。この鉄則を守らないと、締め括りは毎回同じになる。「頑張ろうっ!」。だれも本気でついてこない。不毛の努力を強いるな。

社長をはじめ、全員が「営業生産性を高めることなく収益を伸ばそうとすれば、労働時間を長くするしかない」との共通認識を持つこと!

 そうでなくては営業の仕事はいつまで経っても学生から嫌われ、世間から疎まれる。

私が教育指導を通じて執念を燃やしつづけてきたのは「営業の地位の向上」に尽きる。

 私は営業の仕事が好きなのだ。大きな誇りと喜びを感じてきた。営業関係者の社会における地位、そして社内における地位をもっと高めたいと心から願い、今日まで頑張ってきた。
オ ーナー企業に珍しくないが、社長の求心力と社員の我慢により業績を支える経営はもはや限界に達した。優秀な人材からそっぽを向かれてしまう。
 平たく言えば、営業生産性の向上とは、儲かるやり方へシフトすることだ。これについては、第3章で述べた。営業立て直しのポイントについては、次節で述べる。

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