「営業ノウハウ」は役立たずなのか④
「営業プロセス」の実際
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◇設定の方法
 最後に、営業プロセス設定の方法を明らかにする。

おもに「自社」「顧客」「商談」という3つの特性を踏まえ、最適な手続きを考案する。

 自社については、業種や商品はなど。顧客については、既存か新規か、中小か大手かなど。商談については、小口か大口か、リレーション系かソリューション系かなど。同じ会社でも、事業や部門により営業の特性が大きく異なれば、プロセスを変えるのは当然である。

営業プロセスは、すべての関係者が営業活動の目安として気軽に活用できるよう、なるべくシンプルにする。

 プロセスを複雑にするほど、使いこなせる社員が減っていく。それは後からいくらでもできる。成果を上げるための道具ということを忘れるな。

また、プロセスを複雑にすると管理は緻密になるが、煩雑にもなる。

 私がこれまでに設計を請け負った経験では、簡素に始めるほうが結果がいい。とはいえ、それも教育指導を行う社長の力量次第である。

社員の支援に自信があるなら、本格的なプロセスを導入してもよい。

 社長が「決めてお仕舞い」はもっともいけない。社員が顧客接点で実行に移すところまで見届ける。企業規模により、それは部下を預かる直属の上司の務めになるが…。

◇設定の具体例
 読者が営業プロセスをイメージしやすいよう、設定の具体例を挙げる。
 ソリューション系の法人営業を行う中小企業が設定した5ステージを紹介したい。顧客(見込客のこと)からの問い合わせや引き合いがほとんど入らず、もっぱらこちらからの働きかけによる「新規開拓」で売り上げを形成している。決して簡単な営業活動でない。
 なお、ステージは「局面」であり、「段階」を表すステップとほぼ同じ。
 1.情報提供ステージ。
 顧客に″おみやげ″となる情報を持参し、人間関係を形成する「リレーションステージ」である。
 飽和市場では、ライバルの既存顧客、商品の既購入者が働きかけの対象となるので、会社説明と商品説明は行えない。このルールを守らないと、顧客との継続面談が難しい。なかでも決定権者やキーマンに通うことは絶望的だ。

最低限の人間関係を築けるまでは″プレゼント″に徹する。

 営業活動を始めて間もない頃に顧客につっけんどんに断られたら、だれだって新規開拓から逃げ出したくなるに決まっている。
 2.情報収集ステージ。
 顧客に質問や観察を行い、現状を探索する「サーベイステージ」である。
 情報収集という言葉は、私みたいにアバウトだ。ソリューション系の法人営業なら、「サーベイ」や「リサーチ」の域に達していること。

なかでも「負の現状」をもたらす要因、つまり問題点をつかむ。

 幾度か、もしくは幾度も通いながら″顧客理解″を掘り下げ、「課題」を突き止めてビジネスチャンスとする。この課題の明確化は、提案営業の全工程(過程)において最重要である。
 人間関係ができていないと、法人顧客は経営や業務に関わる重要情報を明かしてくれない。個人顧客は人生や生活に関わる重要情報を明かしてくれない。

情報収集から営業活動、とくに新規開拓を始めてならない。

 なお、情報収集を端折る営業担当者には辞めてもらうしかない。
 3.打ち合わせステージ。
仮説としての「課題解決策」をぶつけ、提案内容を固める「コラボレーションステージ」である。

すでに顧客と課題のすり合わせを済ませた。これは″種まき″に当たる。″刈り取り″を念頭に置き、″生育″を促すことになる。

 はやる気持ちが分からないわけでないが、絶対に走ったらいかん。そこの、ぼく。

キーマンと提案内容を″共創″し、提案書を″共著″とする。

 自分が頑張ると、提案営業と正反対の推奨営業である。社長は、こぎれいな資料をつくり、一人悦に入る営業担当者からパワーポイントを取りあげよ。
 なお、″共創″を決定権者と行うと、そのまま決まるかもしれない。

私にとりわざわざ提案書をつくり、プレゼンテーションを行うことは屈辱である。それに頼らざるをえない営業力に失望する。

 職業人生のなかで会心と思える商談には、提案書もプレゼンテーションも存在しなかった。
 それを好むのは「スタッフ志向」が強い証拠であり、営業として伸び悩む。提案書やプレゼンテーションの手法や技巧に関する知識に傾斜すると、たいした数字を残せない。

私は大勢のトップセールスマンと接したが、心底すごいと感じる人に頭のいい人はいなかった。ここに営業の仕事の厳しさと奥深さがある。

 営業本など買わないことだ。買わなければ読むこともない。ちなみに、私はカネも時間ももったいないので本は買わない。「何、出すから買う」。ごめんなさい。

自分が頑張って提案内容を考え、提案書をつくり、それで数字がよくなるとしたら、これほど楽な商売はない。営業活動の本質が対人関係にあることをわきまえない高学歴の社長や社員が増えた。

 4.提案ステージ。
 顧客に提案内容を説明し、それに対する理解を促進して評価を獲得する「プレゼンテーションステージ」である。

競争に勝つのでなく、競争を避けることに全力を注ぐ。

 プレゼンテーションで相手を上回ろうとするのはスタッフの発想であり、思いどおりの成功を収められない。言い換えれば、営業の素人の発想である。それまでの働きかけを通じ、一社プレゼンテーションに持ち込む。これには実質上を含める。

この段階でのライバルと横一線の「コンペティション」は営業の怠慢であり恥である。

 プレゼンテーションは提案書に沿って進めるのが基本なので、提案内容を含めた出来がカギを握る。念を押せば、共創と共著が前提である。

プレゼンテーションは本番よりも段取りのほうを断然重んじる。

 なかでも決定権者とキーマンを同席させる手はずを整える。本人と両親を立ち会わせず、結婚を申し入れる営業担当者がいる。社長はそうした愚行を許してならない。
 そのうえでプレゼンテーションに備え、顧客先の主要人物の同意を取りつける「根回し」と予行演習となる「リハーサル」を徹底させる。

プレゼンテーションそのものを巧みにやろうとするのは間違い。

 ちなみに、私自身はうまくやろうとしなくてもうまいので、ほとほと困った。不器用な人がうらやましかった。
 5.追跡ステージ。
 提案後に接触・折衝し、クロージングにこぎ着ける「フォローアップステージ」である。
 読者に誤解が生じると申し訳ないので、クロージングについて説明を行う。
 「プレゼンテーション」と「クロージング」を切り離さない。

プレゼンテーションのその場で顧客に決断を促す。

 とはいえ、熟した果実が自らの重みで落ちてくるのを受け止めるというニュアンスである。

クロージングで断られるわけでない。

 そこに至るまでの手続き(プロセス)が不十分だったために断られる。そうでなければ営業活動に意味がなくなる。この仕事をなめたらいかん。
 本人と両親が同席していないと返事をもらえない。念を押すまでもなく、営業は度胸だ。

クロージングにおける頑張りは値引き要求を誘引する。

 営業常識として知っておくべきだ。
 いま述べたとおり、提案時に受け入れを促すのが鉄則である。しかし、例えば、顧客先の意思決定のルールやメカニズムにより、その場で結論が出ないことがないわけでない。営業担当者は商談の着地まで粘り強く追いかける。
 以上。中小企業が設定した営業プロセスを取りあげ、私が簡単な解説を加えた。それぞれのステージにおいて押さえなければならないポイントの参考くらいにはなるだろう。

◇設定の効果
 読者は具体例を眺め、これなしに開発営業は活発にならないと実感できたはずだ。
 このプロセスは営業の道具だった。のこぎりを与えれば、人は木を切りはじめる。

プロセスを与えれば、営業担当者は案件を育てはじめる。

 開発営業では、こうしたプロセスに則し、ステージ(ステップ)を踏む。

社員は案件の進捗や状況を逐一開示する。社長はそれを確認しつつ、日次報告や同行営業などで適宜関与する。

 営業プロセスの設定には自社の営業活動を量的拡大から質的充実へ向かわせる効果がある。

そして、質的充実には社員の管理よりも支援のほうが重要になる。

 とくにソリューション系の営業部門・拠点に「営業管理者」はいらない。これに関して述べているのが「営業管理者セミナー」である。

縮小市場や不況期でも目標達成を成し遂げられるとしたら、「営業支援者」である。

 管理しかできない「営業管理者」は職場を去らなければならない。
 負け組企業は営業会議が後ろ向きだ。昨日までの「結果」を社長が責める場になっている。社員はモチベーションが下がる。勝ち組企業は営業会議が前向きだ。明日からの「過程(正確には、過程の行動)」を社長が助ける場になっている。全員で効果的なやり方を具体的に話し合う。社員はモチベーションが上がる。
 念を押しておきたい。私は先に「営業ノウハウ」について述べた。そして、いま「営業プロセス」について述べた。

営業ノウハウは営業プロセスに仕分けされていなければ、満足しうる成果を上げられない。

 営業再建屋としての私がクライアントで真っ先に取り組むことが分かっただろう。この営業プロセスと営業ノウハウを明快に説いているのが「社長の打ち手」「社長の営業活動」である。2日連続でご参加くだされば、両方とも腑に落ちる。

業績テコ入れでは、営業活動に関するヒアリングやウオッチングを通じ、営業プロセスと営業ノウハウを固める。

 しかし、本来は社長が行うべきだし、手間がかかるにしろ社長が十分に行える。あえて私を呼ぶまでもない。後はこれを最大の拠りどころとし、結果を出せない営業を変えていく。
 『社長虎の巻 結果を出せない営業はこう立て直す』と併読してくだされば、一段と理解が深まる。実は、私のクライアントには優良企業や勝ち組企業が少なくなく、このところは半数を超える。大胆な業績拡大、強烈な社業発展を図るときにも、やはり営業プロセスと営業ノウハウを固める。
 なお、営業プロセスに仕分けされた営業ノウハウを単に「営業プロセス」と呼んでいい。これが社員に「営業変革」を促す明確な指針になる。

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