「営業ノウハウ」は役立たずなのか③
「営業プロセス」もないなんて!
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◇設定の意義
 「営業プロセスを教えてください」。私が企業研修で尋ねると、会場が静まり返る。だれ一人として答えられない。しつこく食い下がると、机上の空論をもてあそぶ講師と見なされる。

顧客への営業活動により収益を獲得しなければならないのに、その手続きさえ明確にしていない企業がある。

 私は恐ろしいことだと思う。そこで、「営業プロセス」を設定する意義と必要性、方法について順番に述べる。最初に、営業プロセス設定の意義を明らかにする。

モノを創るには「製造工程」を固める。同様に、モノを売るには「営業工程」を定める。この工程を「プロセス」と呼ぼう。

 会社としてあらかじめ決めておかなければ、どちらも成り行き任せになる。社員が創った結果、売った結果がどうなるかはまるで読めない。

例えば、製造では不良品が続出し、営業では目標未達が常態化する。

 社長が青ざめて社員にハッパをかけたところで状況はたいして変わらない。これは「根性」で乗り越えられない問題である。社長は「科学」で克服せよ。

段取りが標準化されているから、だれが携わろうとそれなりの製造と営業の水準、そして成果が保たれる。

 私はシンプルに「製造工程と営業工程は黒字経営の両輪」と考えている。

概して、業績不振企業は営業工程という発想を欠いている。

 仮にあったとしても、形ばかりの社員教育のなかで営業担当者に知識として理解させるに留まる。日本が「製造は一流、営業は三流」と揶揄(やゆ)されるゆえんだ。

営業工程をしっかりと回さないと、経営の燃費は最悪になる。

 社員が頑張っているのに赤字、長時間労働なのに低賃金ということが起こる。社長は責任を自覚せよ。両輪がうまく回ってこそ、好ましい数字がもたらされる。

営業プロセスは自社にとり最重要の営業ノウハウである。

 営業担当者がこうした手続きで収益をつくるという取り決めだから、当然だろう。
 しかし、私の経験では、こうした認識を持つ社長はきわめて少ない。さらに、設定した営業プロセスを社員の教育指導に生かす社長はもっと少ない。社長も社員も、上司も部下も、全員が普段から営業プロセスを積極的に活用することだ。

創った製品を商品として売ることで、はじめて収益を上げられる。

 言い換えれば、製品は「営業」を介して商品に変わる。そうでなくては在庫のままである。

「売上=製造力×営業力」。売り上げは「売り物」と「売り方」の掛け算である。

 売り上げづくりを円滑かつ確実に前進させるには、これまで軽視してきたか欠落していた営業プロセスに関心を寄せるべきだ。営業活動の品質と効率を両立させ、成果を向上させるうえで不可欠となる。

会社として売り上げづくりの手続きを示さず、目標未達の責任を社員に押しつけるのは不当である。


◇設定の必要性
 次いで、営業プロセス設定の必要性を、社員(部下)と社長(上司)に分けて明らかにする。
 1.社員にとって。
 営業担当者は普段、わがままで手ごわい顧客に振り回されている。そこに、力を入れなければならない案件が加わる。こちらのほうは進み方が多様であり、一度として同じでない。
 そうした営業活動を″山登り″にたとえるなら、頂上にたどり着ける道筋が示されていればとても心強い。

迷ったり逸れたりしがちな営業担当者にプロセスの恩恵は大きい。

 2.社長にとって。
 年度末に上がってきた営業担当者の数字に対し、社長ができることといえば、ほめるか叱るかのいずれかだ。それが悪くても手遅れであり、「後の祭」。
 市場の縮小が加速し、目標の達成が困難になって注目されるようになったのが「プロセスマネジメント」である。社員の成果を決定づける「過程(工程)」と、そこでの「行動」を社長が管理しようという発想にほかならない。

社長が「過程」に踏み込まないと、数字の向上を果たせない。

 ここでいう過程は、正確に述べれば「過程の行動」であり、原因に当たる。そして、社長がプロセスマネジメントを実践するには、プロセスの存在(確立)が先決である。

この″土台″の出来というか精度がプロセスマネジメントの成果を左右する。

 平たく言えば、数字が伸びるプロセスになっていなくてならない。私が企業から設計自体を請け負うようになったのもそのためだ。
 営業プロセスは営業活動を推進する社員にとっても、営業活動を管理する社長にとっても頼もしい援護となる。
 次節で腑に落ちると思うが、御用聞き営業が主体となる「通常営業」、つまりルーティンに営業プロセスは不要である。営業担当者が顧客に見積書などを示し、早ければその場で、当日に、遅くとも数日で商談の結果が出るからだ。
 しかし、案件育成営業が主体となる「開発営業」、つまり超ルーティンに営業プロセスは必須である。なかでも有力企業の上層部に対する果敢な働きかけは、高く険しい山登りになる。逆に言ったほうが読者に親切かもしれない。

営業プロセスがないと開発営業が活発になることもないし、提案営業が機能することもない。

 私は、社長が提案営業を掲げていながら営業プロセスがない企業を散々見てきた。こうした恥ずかしい事態がなぜ起こるかといえば、社員に旗を振っている社長が提案営業をさっぱり分かっていないからだ。
 私が社長や営業統轄役員にせめて″本物の提案営業″のエッセンスに触れてほしいと願い、1日間で行うのが「和田創 提案営業実践セミナー」である。

営業プロセスがない企業では、社長が社員に″目隠し″で山登りをさせているに等しい。危険極まりない。

 社員がつまずいて足をくじいたり、転落して命を落としたりしやすい。開発営業の挫折であり失敗である。成果が上がるはずもなく、すぐに嫌気が差して通常営業に戻ってしまう。
 実は、社員のストレスが大きいだけでなく、案件の進捗が見えてこない社長のストレスも大きい。どちらもいらいらが募る。

結局、営業プロセスとは、開発営業において成果をつかむハシゴにほかならない。これがないとゴールにたどり着けない。

 既存顧客への顔出しを通じた地道な販売や受注はもちろん大事だが、優良顧客の獲得や大口商談の決定といったルーティンを超えた取り組みが売り上げの伸長に欠かせない。重要案件にフォーカスし、プロセスマネジメントを実践すべし。
 営業プロセス設定の方法については、次節で述べる。

◇目からウロコ!
 本節の趣旨から外れるが、ここで「提案営業」に関して説明を補いたい。私が普及に当たってきた″本物の提案営業″である。すでに述べたとおり、それは″真逆営業″なので、習慣性の客回りを主体としてきた企業の社長や社員はなかなか腑に落とせない。
 営業が強い会社の条件として、「営業への深い愛情」と「営業への正しい理解」を挙げた。提案営業を行えなくては、ソリューション系の営業では数字を伸ばしようがない。
 私が行う講演や公開セミナーに寄せられた参加者の膨大な声のなかから7つを紹介しよう。当人のレベルが高くないと、ここまでの感想は記せない。趣旨が変わらない範囲で、私が文章や語句を整えているものもある。本書の対象となる社長と営業幹部の声に限定しようと思ったが、社員がどう受け止めたかも参考になると考えた。
 1.40代・男性、食品製造業、代表取締役。
 「当社はいまから営業のやり方を抜本的に変えようと思っていましたので、すべて役に立ちました。提案営業の定義がまったく違っており、社員とともに一から取り組んでいきます」。
 一番印象に残った言葉は、「顧客の要望やニーズに応えない」。
 2.30代・男性、製造業、経営企画室。
 「私と同僚で経営トップと営業トップを説得し、きょうのセミナーに連れて来ました。営業に関する根幹思想とベクトルの統一が目的です。和田先生の講義は3回目ですが、何度聞いても反省しますし、元気が出ます。ありがとうございました。これからセミナールームの隣の休憩コーナーで営業方針について緊急の打ち合わせを行います(笑)」。
 一番印象に残った言葉は、「営業発の全社改革」。
 3.50代・男性、専門機材・部品製造卸、代表取締役。
 「とても心地よく楽しむことができました。講演が小気味よく、話し方にリズムがありました。ときおり交えるユーモアも、緊張感を和らげるうえで効果的だと感じました。私は社員を前にして話すことが多く、その参考にもなりました。厳しいご指摘の連続ではありましたが、今後の勝ち残りへ向けての大きな勇気とヒントをいただくことができました。先生のいろいろなお話を伺いたいと思います」。
 一番印象に残った言葉は、「たくさんありすぎて、一つに絞れません」。
 4.50代・男性、製造業、経営企画室。
 「提案営業を自分なりに実践してきたと思っておりました。しかしながら、きょうの講義を聞くなかで、商品の売り込み目線でしかなかったと痛感させられました。営業生産性の概念、『段取り八分、商談二分』の尊重、残存者利益の獲得など、今後の活動のなかに取り入れていきたいと感じています」。
 一番印象に残った言葉は、「改善は無力」。
 5.50代・男性、機器メーカー、代表取締役社長。
 「知人の経営者から先生のセミナーを勧められました。ショックの受けっ放し。御社のホームページに謳う″目からウロコ″の講演を実感しました。噂に聞いたとおり、非常に厳しい内容でした。ありがとうございました」。
 一番印象に残った言葉は、「営業との決別」。
 6.30代・男性、部品製造、営業・主任。
 「初めは恐る恐るでしたが、そのうちおかしさが込みあげてきました。和田講師のお話は一々もっとも、基礎的なことばかりです。なぜ、自分はこんな当たり前のことに気づかなかったのか、恥ずかしくなりました。同時に、上層部の顔が浮かんできて、笑ってしまいました。弊社がいまの市場に通用しない非常に古い営業をやっていることが分かりました。会社を変える自信はありませんが、自分は変わるつもりです。このセミナーと巡り合え感謝いたします」。
 一番印象に残った言葉は、「堂々たる化石営業」。
 7.50代・男性、人材派遣業、代表取締役。
 「激辛の講演でハラハラした。非常に耳が痛い。途中で帰ってしまった人の気持ちが分かる。しかし、ご指摘のとおり。当社もいまほんとうに困っている。見直しのきっかけが得られた」。
 一番印象に残った言葉は、「好況期にしか通用しない経営や営業のやり方が、不況期に通用しなくなったというだけの話。宴はもう終わった」。
 以上。「提案営業」「営業変革」をテーマとした講義を受けた方々の率直な感想のほんの一例である。紙幅の都合で、長文の渾身のコメントを載せられなかった。

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