目標達成を確実にするために提案営業はある④
提案営業は考える営業担当者を育てる
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◇作業と仕事の違い
 成長市場では、顧客の引き合いや注文が活発であり、「作業」に近い営業活動で売り上げを立てられる。その証拠に、企業は好況期できっかけが多くなると、先を争うように営業担当者の人数を増やそうとする。
 しかし、成熟市場では、顧客の引き合いや注文が減少するので、「仕事」と呼べる営業活動でないと売り上げを立てられない。
 そして、作業に留まるのが「人手」であり、仕事を行えるのが「人材」である。

人手の典型が顕在ニーズの刈り取りに留まる「御用聞き営業」、人材の代表が潜在ニーズの掘り起こしを絡める「案件育成営業」となる。

 営業再建屋の私は後者に改めないと、クライアントの数字を伸ばす自信が持てない。
 御用聞きでは訪問件数を増やすことが大事になるが、営業担当者がすでに頑張っている場合にはどうにもならない。私は破綻会社の「営業」に限った立て直しも行っているが、営業のサボタージュ(さぼり)が直接の原因という事例を知らない。

作業と仕事、人手と人材の違いは、労働における「考える」要素の軽重で決まる。

 私は市場縮小が加速し、市場競争が熾烈になった1990年代半ば頃から、「考える」要素を重んじた営業活動の浸透に努めてきた。
 この考える要素は「創造性(クリエイティビティ)」という言葉に置き換えられる。

私は結局、クライアントに「提案営業」を導入することで、労働における仕事の割合を高めてきた。

 口で言うのはたやすいが、作業の割合が高い労働に慣れ切った営業担当者は頭がすっかり錆びついている。鍛えてこなかったので、私が「提案営業研修」で頭をちょっと使わせるだけで筋肉痛を起こす。「ひいひい」とうるさいのだ。

「頭は筋肉」。この学説を、私が発表したことを知る人は少ない。

 ちなみに、他人に教わるほど、自分で考えられなくなる。本やセミナーとの接し方を間違えると、考える力はひどく衰える。どちらもなるべく遠ざけることだ。
 私が和田創研の社員に口を酸っぱくしたのは、「とくに和田さんの本やセミナーだけはやめておけ」だった。勉強好きの高学歴者は注意すべきだ。
 提案営業では、こちらから顧客に働きかけて需要を創出することが主眼になるので、考えるほかにない。習慣性の客回りが中心となる営業担当者はほとんど経験していないはずだ。

凡人が人材になる唯一の方法は、つねに考えることだ。社員がつねに考える会社は圧倒的に強い。

 「つねに」とは、時間だけでなく執念のこと。すなわち、考え抜く。
 営業再建屋の私は原則として業種や規模を問わないが、万能というわけでない。おもにソリューション系の法人営業を対象としている。その会社が「提案営業」の導入で売り上げを大きく伸ばせると思うと立て直しを引き受ける。
 私は経験を積むにつれ、その見極めをきわめて慎重に行うようになった。うまくいって当然である。提案営業は注文住宅やリフォーム、生命保険、学習、富裕層向けの金融商品など、ソリューション系の個人営業にも有効である。

私は、業績の良し悪しはもちろん、企業の優劣は人手と人材の割合で決まると思う。

 ここまで述べたことはおおよそ理解できるだろう。問題はここから。では、人手と人材を分かつ「考える」とは何か?

「考える」とは、自分ができない業務や事柄に取り組むことだ。「挑戦行動」に特有かつ必須の脳の働きである。

 それは素晴らしい成績を残している人に共通する。念を押せば、通常営業(ルーティン)をはみ出し、開発営業(超ルーティン)に携わる。

挑戦行動に裏打ちされていなければ「提案営業」と呼ばない。

 この認識は社長をはじめ、すべての関係者にとりきわめて重大だ。
 そうなっていないとしたら、単なる「資料営業」である。営業担当者がペーパーをつくり、それを用いて商談を進めているにすぎない。資料営業と提案営業は無関係だ。私が見聞きしたところ、数字を悪くしている企業のほうがはるかに多い。
 先に述べた本を読むとかセミナーを受けるとかは、それ自体は挑戦行動でない。人が受け身の状態で真剣に考える、まして必死に考え抜くことはまずない。

本は読後勝負、セミナーは受講後勝負だ。

 信じられないかもしれないが、本書は一応、本である。挑戦行動へ移せ。

◇提案営業の威力
読者に提案営業の威力の一端を感じ取っていただくため、教育指導に当たった私が衝撃を受けた出来事を明らかにしたい。
私は以前、運送会社で「提案営業研修」を何グループにも分けて行った。対象は、全国に展開する「業務拠点」の責任者やその候補生である。一般に、物流や保守・管理などのサービスを提供する業務拠点は「営業拠点」を兼ねる。そして、その拠点の業績を著しく左右するのが拠点長の営業力だ。

中小企業の社長の第一の仕事が営業活動であるように、業務拠点長の第一の仕事も営業活動である。

 少なくとも市場に逆風が吹いている状況ではそうだ。上がこれを守らないと、企業も拠点も規模がどんどん縮んでいく。

私は提案営業研修でいつもそうするように、創注の前提として「買ってください」というアプローチを禁止した。

 創注とは、注文の創出のこと。すると、直後の休憩時間に30代の男性が話しかけてきた。
 「先生、買ってくださいという営業活動はありえません。私たちが飛び込んで買ってください、つまり運ばせてくださいと迫ると、お客の反応は一つです。どこそこはいくらだけど、お宅ならいくらで運んでくれるの? そんなやり方では会社も持ちませんし、自分もいい給料を取れません」。
 さらに、私は別のグループで頭をかち割られた(←出血はしていません)。やはり、直後の休憩時間に30代の男性が話しかけてきた。
 「私が営業としてもっとも力を入れているのは、先生がおっしゃった創注です」。
 私の主張を繰り返しただけだったので、軽い気持ちで応じていた。何せ数分間でたばこを2本吸わなければならない。じきに分かったのだが、「創注」の中身が違った。

私が説いたのは、「運ぶ仕事をつくる」。彼が語ったのは、「運ぶモノをつくる」。

 「先生、運ぶ仕事なんてつくる必要はありません。私はお客へ運ぶモノとそれが売れる仕組みを提案しています。そうすれば黙っていても運ぶ仕事はついてきますから」。
 例えば、商品の開発とウェブを絡めた受注システムの構築などである。私と彼では「提案営業」が別次元だった。まいりましたよぉ~。
 私は提案営業研修の冒頭でこう言い放っている。
 「売ろうとして売れる時代はとうに終わっている。大丈夫、売ろうとしても売れない。大事なのは頭の切り替え。即刻、営業マンをやめなさい。あばよっ! 商談など後回しだ。あなた方が課題解決策の投げかけを通じて顧客満足を叶えるなら、結果として自社利益はついてくる。得ようとするのでなく、与えるべし」。
 それを見事に裏づける話だった。ただし、2000年代前半の出来事であり、営業担当者が行う提案営業はどんどん進化を遂げている。いまどき私にこの程度の話をしてきたら、ぷいっと横を向く。何せ数分間でたばこを2本吸わなければならない。

◇営業の人財
 主要な法人営業においては、社員が提案営業を行わないかぎり、人手から人材に変わることはない。私は教育指導の経験からそう確信している。が、単なる人材でない。

提案営業は創造的人材、すなわち「人財」を育てる。

 社員に即して述べれば、それにより長く険しい職業人生を誇り高く歩んでいく。
 営業担当者の年齢、経験、地位が異なるのに、皆が似たレベルの営業活動を行うことは企業にとり損失である。また、それでは若い世代が目標を持てず、成長を遂げられない。「自分も和田さんみたいな営業になりたい」と思える社長や役員、上司や先輩がいないのは不幸である。
 社歴が数年を超えているのに、営業に人材が見当たらない会社はきわめて多い。

社員が育っていないのは、挑戦行動が根づいていないからだ。

 習慣性の客回りでよしとする風土が染みついている。営業担当者は忙しくしていれば、周囲が頑張ったと見なしてくれる。助かりますよぉ~。

行動自体の「収益直結性」がほとんど問われない。意識と意欲の低い営業担当者にとりパラダイスで働く気分だろう。

 業績が振るわない企業では、社員の営業活動に関する「マネジメント」がまったくなっていない。私が目標必達をテーマに、「社長の打ち手」と「営業管理者セミナー」に力を入れている最大の理由である。
私は右肩下がりの経済、縮小市場を勝ち抜ける人材の育成に貢献したいと願い、″本物の提案営業″の定着に心血を注いできた。社員がときに強大なライバルと本気でぶつからないかぎり、勝ち抜ける実力は備わらない。

営業が強い会社に再生するには、「武勇伝」が飛び交う風土に変えることだ。「超ルーティン」の活発化と一体の関係である。

 社長を筆頭に、すべての関係者は「提案営業」を実行に移せ。なお、社長は「失敗を恐れるな。」と命じないこと。てきめんに社員が失敗を恐れる。

「失敗を増やせ。」と命じる。

 意図は同じでも、効果はまったく違う。
 社長が社員に発するメッセージは端的でなければならない。あいまいさを残してならないのだ。これを守らないと行動を変えられず、ゆえに数字を変えられない。
 業績の下落や規模の縮小が続き、変革を必要としながら変革を断行できない社長の共通点は、きっぱりと命じられないことである。
 それはもっぱら大将の覚悟により担保される。これでようやく兵隊は超ルーティンへ動きはじめる。

人は挑めば考える。挑戦なくして成長なし。

 提案営業では、失敗を含め、存分に挑戦を楽しむ。

◇説明の補足
 私が啓蒙に努めてきた「提案営業」だが、営業担当者や営業管理者はもちろん、それを標榜する社長にもほとんど理解されていない。そこで、本節の最後に説明を補いたい。
 実は、私自身もしばしば誤解されてきた。顧客に声をかけていただくのはありがたい。

しかし、私を呼べば売れるようになると勘違いしている。

 それは不可能である。悲しいかな、私は売るための教育指導を行えない。

ゆえに、役立つための教育指導しか行ってこなかった。

 多くのクライアントで販売や受注の増加を果たしてきたが、それは役立ちの結果としてついてきたにすぎない。

そもそも「提案営業」とは、うまい営業にならず、顧客にとりいい営業、なるべく最良の営業になると誓うこと。

 腑に落としてほしい。幾度も述べてきたが、数字は主役が決める。当然ながら、売れない時代でもっとも難しいのは売ることだ。にもかかわらず業績に苦しむ社長は「商品を売れ」ともっとも難しいことを社員に要求する。ほとんどが凡人ということを忘れている。
 したがって、数字が振るわないばかりでなく、社員がストレスに押しつぶされそうになる。これでは営業の仕事に喜びを感じられるはずがない。おのずと定着も悪くなる。
 社長は「商品を売れ」でなく「相手に役立て」と命令するだけで、社員も顧客もそして自社もハッピーになることに気づくべきだ。

業績不振の原因は経営理念などに謳う「顧客第一」をなおざりにし、社員を「自社第一」へ走らせようとする社長自身にある。

 しかし、「顧客第一」を口先で唱えたところで数字はよくならない。社員が現場で具体的な行動や話法に落とし込み、顧客にはっきりと実感してもらうことが条件になる。そのためには″本物の提案営業″の習得が不可欠である。
 振り返れば、市場環境や競争環境が厳しくなるとともに営業は進化を遂げた。いまどきの勝ち組はほんとうにすごい。
 私は突出した成功事例を「提案営業研修公開コース説明会」のなかで紹介している。目からウロコが落ちるはずだ。なかには溜め息を漏らす参加者もいる。社長はどうか勝ちっ放しになる営業のレベルとイメージを感じ取ってほしい。

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