目標達成を確実にするために提案営業はある②
儲かるやり方へシフトせよ
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◇景気の沸騰
 日本の景気はリーマン・ショックと東日本大震災による長期の低迷から脱した。私が行う公開セミナーでは、2012年の終盤に参加者の表情がいくらか変わった。2013年に入ると会場の雰囲気が和らぎ、2013年度に入ると参加者の表情が力強さを増していった。

営業は現金だ。売り上げが伸びると、顔が明るくなる。

 夏休み以降、土木建設など一部の業種・企業では、営業活動にブレーキやストップがかかりはじめた。社員が受注したところで仕事をこなし切れないのだ。情報システムなど一部の業種・企業では、長らく途絶えていたホームページを通じた引き合いが急増しはじめた。
ま た、求人媒体で営業職の募集が目立つようになった。企業の大半は数年に及んだ景気のどん底期に営業担当者を削れるだけ削った。最小の販売や受注を回していける水準まで人数を絞り込んだので、それが増加に転じた途端に現場がパンクする。
 営業を巡る環境は沸き立ちつつある。私自身はせっかく内需型企業などで高まっていた営業の強化や再生に取り組む機運がしぼむことが残念でならない。

追い風に背中を押され、営業担当者が既存顧客を回るだけで売り上げを立てられる状態は、経営の観点からは危うい。

 この景気がいつまで持つのかという疑問もさることながら、日本の経済、いや日本の社会の先行きは依然として不透明なままだ。国家が抱える巨額の借金を国民が必死に返済しつづけたとしても、人口が激減するので国民一人当たりの借金はなかなか減らないのでないか。頭の単純な私などはそう思ってしまう。
 2010年に現役世代3人で高齢者1人を支えている。私たちは負担の重さに押しつぶされそうだ。それが2050年に1人で1人を支えなくてならない。

会社は利益を、社員は給料をほとんど税金に持っていかれる?

 私は根が楽観的だし、またその頃にはこの世にいない。それでも心配になってくる。微力な自分にできるのは、ぎりぎりまで現役として働き、ぽっくり逝くことくらいだ。わが子を含めた次世代の負担をたとえわずかでも軽くしたいと心から願う。
 企業は目の前の顕在ニーズを刈り取る社員の「採用」に躍起になりはじめた。

しかし、好況期に特有の現象に浮かれると、不況期に特有の反動に苦しめられる。

 私としては社長にせめて中期的な視点から、逆風が吹く環境でも潜在ニーズを掘り起こせる社員の「育成」を並行させてほしい。

◇収益獲得の現状
 そこで、営業活動による収益獲得の現状を整理したうえで、私が普及に努めてきた「提案営業」の狙いについて述べる。まずは、収益獲得の現状を明らかにする。成熟市場の深まりにつれ、営業現場で起こった事実だ。フィルムを巻き戻す。
 1.商談の契機。
 顧客の購買意欲は冷え込んだ。かたや、ライバルの働きかけは活発になった。これはお互いさま。長らく商談のきっかけであった「引き合い」は年々絶対数が減った。

それゆえ、営業担当者がきっかけに対応し、見積書を提示して形成しうる「売上額」は落ちつづけた。

 2.商談の手法。
 顧客の値引き要求は過酷になった。さらに、ライバルとの値引き競争は熾烈になった。長らく商談の拠りどころであった「価格」は年々信頼性が崩れた。

それゆえ、営業担当者が見積書を提示して確保しうる「利益率」は下がりつづけた。

 この2点に大半の企業や営業担当者は直面し、苦悩してきた。売上額が下落し、利益率が低下するから、「利益額」は激減する。収益が悪化し、業績は底を這う。
 提案営業とは、こうした事態を受け止め、もっと儲かるやり方へシフトしようとの取り組みである。当然の″自己防衛策″を講じなくては、会社は持ちこたえられない、社員は留まれない。追い詰められた企業は社員の削減で生きながらえるかもしれないが、放り出された個人はやっていくことができない。
 危機感の強い企業は遅くとも21世紀初頭に営業の見直しに踏み切った。私が1990年代後半に集中的に伺ったクライアントはその後の荒波を乗り越えた。

大手企業や名門企業でも「業績不振による赤字の発生?リストラによる黒字の捻出」という縮小均衡を繰り返したところがある。

 なお、過去形で述べた2点がいまも止まらない業種や地域がある。
 地域について述べれば、私は2012年に講演で山陰地方を訪れ、あまりの衰退ぶりに言葉を失った。そして、これは東京を含めた日本の近未来の姿だと感じた。
 ざっくりとした数字だが、日本の人口はピークの2008年に1億2千8百万人。それが2060年に3分の2になり、2100年に3分の1になる。前者では首都圏(1都6県)が消える計算だ。
 2030年頃から年間に百万人前後が減ることもある。人口が百万人前後の都市は数えるほどだ。人口が百万人前後の県は非常に多い。それが消える。予測とはいえ、恐ろしい。
 フェイスブック(Facebook)を眺めると、社長は営業よりもっと現金であり、目下の収益がよければすぐに緩んでしまう。それでは生き残りが難しいと、私は思う。

◇提案営業の狙い
 次いで、提案営業の狙いを明らかにする。
 1.商談単価の向上。
 商談単価とは、一商談当たりの平均販売金額・受注金額のこと。一言でいえば、成約金額である。自分では造語のつもりだが、私が使いはじめる前に存在したかもしれない。

営業担当者は顧客の「ベネフィット」が大きくなるように追求する。

 ベネフィットとは、利益・利便・利点などの「利」のこと。分かりやすく「効果」、あるいは「価値」と考えてもよい。要は、提案内容の魅力を高める。

おのずと商品の複合による「システム」として提示することになる。

 すでに述べたとおり、仕組みという意味合い。商品とは、ハードやソフト、サービスのこと。要は、顧客にまとめて買っていただく。
 収益源が変わり、有形商品よりも無形商品のほうが利益率が高い。それをどう絡めるかが営業担当者としての腕の見せどころになった。

成熟市場における営業力とは、無形商品を売る力である。

 私は企業研修で受講者にこれでもかとすり込んできた。メーカーといえども、単にハードを売るだけでは適正な利益を確保しにくい。不況期にハードを原価割れで納入する生産財メーカーなどを散々見てきた。知恵のかけらもない。
 ただし、こちらが勝手に商品をあれこれ盛り込んでもうまくいかない。顧客とひざを交えて提案内容を練りあげることが条件である。営業担当者が頑張って考えると、提案営業と正反対の「推奨営業」になる。プレゼンテーションに敗れた後に発する言葉は一つである。

「お客はおれの提案を分かってくれない」。

 そんなものは分からん。学歴が高く、頭に自信がある営業担当者はくれぐれも気をつけよ。

君にいいことを教えよう。営業とはパソコンでなく顧客である。

 自分のつたなさや未熟さによる失敗を相手の責任にしてならない。成長が止まる。

結果として、「売上額」は増える。ライバルと差別化も図れるから、価格主体の条件交渉を避けられる。「利益率」も高まる。

 2.商談成功率の向上。

営業担当者は顧客の抱える「課題」を明確化する。

 いわゆる「顧客理解」とは、課題を掘り下げること。合わせて、数字責任を負う営業担当者としては、課題を広げることを意識せよ。したがって、法人顧客なら業務、さらに経営における課題となり、個人顧客なら生活、さらに人生における課題となる。

おのずと「課題解決策」という″答″を提示することになる。

 要は、顧客に「○」をつけていただく。言い換えよう。正解なので、相手は○しかつけられない。これが「ソリューション」の本質である。

結果として、「確実性」は高まる。売り手による″説得″でなく、買い手自身の?納得″を引き出す。

 私は教育指導でこの2点の徹底を営業担当者に促してきた。

◇提案営業の影響
 提案営業は成果に貪欲だ。やはり優良顧客と大口商談をまとめるのが有効である。

「売上=商談単価×商談件数×商談成功率」。

 この数式を眺めれば容易に気づく。いま述べた商談単価と商談成功率の向上に取り組むことなく売り上げを伸ばそうとすると、「労働強化」を社長が強いるか、社員が選ぶかになる。
 ソリューション系の営業が適する業種でありながら、提案営業へ転換できない企業では、長時間労働が常態化しやすい。私は、法人営業は少なからずソリューションの要素を持つと考えている。

例えば、「商談単価」と「商談成功率」をそれぞれ10パーセント高めると、売り上げは21パーセント伸びる。

 両者の達成が営業の個人成績や部門・拠点業績へ及ぼす影響は絶大だ。しかし、それは自社都合に基づいた思惑では果たせない。顧客志向に基づいた役立ちでこそ可能になる。
 ちなみに、「商談件数」は労働時間を長くすると増える。私がクライアントに定着を図る提案営業では、商談単価と商談成功率を大幅に高め、商談件数はむしろ減らす。
 限られたパイの争奪戦において、商品力が秀でていないかぎり、引き合いに見積書で応えるやり方では勝ち目がない。とくに新規開拓において、ライバルの優良顧客を切り崩すのは無理である。それ以前に、既存深耕や既存拡大において、自社のシェアアップを推し進めるのも困難である。従来の手法の延長線上に、会社の繁栄も社員の幸福もないことに気づけ。

営業変革による一時的なダメージを小さくできる好況期にこそ、儲かるやり方へシフトすべき!

 そもそも不況期に思い切った手を打てる社長は傑物であり、滅多にいない。そうした社長はとっくに自社を堂々たる高収益企業、勝ち組企業へ導いている。私が見るところ、ほとんどの社長は不況期に削るくらいしかできない。

好況期に変えず、いつ変えるのか。

 ライバルを圧倒するには、好況期の後にかならずやって来る不況期に勝つのがもっとも確実で容易である。好況期に変えておけば、不況期が楽しみになる。
 なお、本節で述べた内容と関連し、第5章で「営業生産性」について触れている。

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