御社の営業はどれほど頭で稼いでいるか⑥
御社の営業はどれほど頭で稼いでいるか
 
◇立派な数字
 「頭で稼ぐ時代」。営業活動で立派な数字を残そうとすると、そう痛感させられるはずだ。懸命に知恵を絞り、ようやくそれが可能になる。
 私は社長や幹部に問うてみたい。「御社の営業はどれほど頭で稼いでいるか」。
 営業担当者が頭を使うと個人成績、さらに部門・拠点業績、そして企業業績が化ける。

売り上げはもちろんとして利益が著しく伸びるので、いわゆる「貧乏暇なし」の営業活動から解き放たれる。

 営業担当者は労働時間が長すぎる。満足な数字を残せないからだ。
私は「提案営業」をテーマとした企業研修や公開セミナーでは、頭で稼ぐ営業担当者を育てている。そこで、頭で稼ぐ必要性、特徴とポイントについて述べよう。

◇頭で稼ぐ必要性
 環境変化と和田創研の事例を土台に、頭で稼ぐ営業の必要性を明らかにする。

かつての成長市場では、顧客の購買意欲が旺盛で顕在化しており、足に代表される「体力」を投入すれば数字を立てられた。

 営業担当者がテリトリーを″回る″なら、既存顧客の注文が得られ、新規顧客の開拓が図れた。言い換えれば、営業活動の「量」を重んじた。

いまの飽和市場では、顧客の購買意欲が減退し潜在化しており、頭に代表される「知力」を駆使しなくては数字をつくれない。

 とりわけライバルとの競争が熾烈な業種や市場においては、″考える″営業担当者しか自社や自部門・自拠点に利益をもたらさない。言い換えれば、営業活動の「質」を重んじる。
 和田創研では、「成果連動型」というより「成果還元型」に近い賃金体系を採用していた。社員やその家族が食べていけるよう、フルコミッションにしていない。しかし、自分の稼ぎにより翌年度の年収がかなり左右される。金額のケタは違うが、プロ野球選手の「年俸制」をイメージすると分かりやすい。
 したがって、社員一人ひとりが売り上げを伸ばそうと、つねによりよいやり方を模索しながら働いていた。

営業担当者が頭を使った順に成績を残し、給料を得る。

 これにはコンサルタント業という特性がむろん影響している。が、ソリューション系の法人営業(BtoB営業)におおよそ共通する傾向といえる。

◇頭で稼ぐ特徴とポイント
 個人でも、企業でも、頭を使った順に″いい思い″をする。これにいち早く気づき、ビジネスモデルを一変させたのが、社会から糾弾される裏世界の荒っぽい稼ぎ手である。
 闇商売の巧みな手口を念頭に、頭で稼ぐ営業の特徴とポイントを明らかにする。念を押せば、あくまで腑に落ちやすいたとえである。
 1.準備重視。

商談の成功は、その前段階となる入念な「準備」の結果にすぎない。

 前に述べた「商品本位制から営業本位制へ。」というスローガンを掲げた社長は、私に「営業は、段取り八分、商談二分」と言い切った。社員にもそう説いたはずだ。数字が低迷する企業や営業担当者と好対照である。
 私が教育指導に当たる「提案営業」でも、商談を重視するなと口を酸っぱくしている。
 2.プロジェクト志向。

一人でなく、チームワークに基づく「プロジェクト」で進める。

 メンバーの役割分担と連携がきちっとしている。いわゆる「プロジェクトマネジメント」を実践することになる。属人営業から組織営業へ転換済みなので貴重なノウハウが共有される。彼らは一時雇用のパートさえも″即戦力″に仕立ててしまう。見事な人材活用といえる。また、 リーダーはプレイに手を染めず、部下を使い切る。営業管理者の鏡である。
 3.マニュアル化。

営業手法が行き当たりばったりでなく、時間(段階)に即して標準化され、「マニュアル」に落とし込まれている。

 このマニュアルでは、例えば、顧客にどう話すか、どう応じるかなど、具体的なやり方を示す。それでいて「紋切り型」に陥らず、「臨機応変」が利く。顧客が惹きつけられるのもムリはない。被害者は一様に「自分だけは大丈夫だと思っていた」と語る。
 彼らが摘発されると、押収された証拠品に完成度の高いマニュアルが含まれる。商談成立・収益獲得の虎の巻だ。

かたや、営業にマニュアルを与える企業はきわめて限られている。たいていやり方を教えようともしない。儲ける気がないのだ。

 私は若い頃、自分なりの営業マニュアルを「能率手帳」に貼っていた。
 とはいえ、見開きで完結するごく簡単なものだった。営業活動で折に触れて眺めることができ、とても重宝した。ステップ(段階)ごとに取るべきアクション(行動)を箇条書きにしたにすぎない。確か3年程で頭にすり込まれ、その必要がなくなった。

なお、書くのでなく貼ると、手帳がすぐに開く。習慣化の秘訣だ。

 業績不振企業では、社長が数字という「結果」にしか興味がなく、原因となる「行動(やり方)」を変えられない。したがって、いつまでも数字を変えられないという状態が続く。それでも懲りない。自分を責めず、営業担当者を責める。
 私が著した最初の営業本『提案営業成功の法則』(日本実業出版社)は、自分の営業マニュアルだった。それで印税と仕事が入ったのでうれしかった。また、和田創研の社員の営業マニュアルになった。同書には、私が19歳から営業活動に携わるなかで練りあげ、築きあげたセオリーとノウハウをまとめた。「ハウツー」が主体となる。
 3の「マニュアル化」は、1の「準備重視」とも、さらに2の「プロジェクト志向」とも密接に関わる。

いわゆる「プロセスマネジメント」を実践することになる。

 4.リハーサル徹底。

商談の前に、メンバーの役割分担と連携を大切に、マニュアルに従って「リハーサル」を徹底する。

 足で稼ぐと異なり、頭で稼ぐには関係者全員が揃っての?予行演習″が必須だ。
 ある大手企業の営業課長は「うちの課では、練習が日課」と語った。おのずと練習が当然という組織風土が形成される。彼は20代半ばを過ぎたばかりの若さだった。素晴らしく優秀であり、ほどなく同社を辞め、執筆やテレビ出演など、多方面で活躍している。
 役者や歌手、司会者や講師など、プロフェッショナルはかならず練習する。

練習しないのは下手くそな営業担当者だけである。

 私は冗談を言っているのでない。読者は会社や職場を振り返ってほしい。
 自らは「練習の虫」、それも蛆虫(うじむし)である。例えば、著作のブラッシュアップだけで、一通りできた原稿に数回から数十回はうじうじと繰り返している。出版まで数年から十数年はかかってしまう。
 ちなみに、本書は十数回、『社長虎の巻 結果を出せない営業はこう立て直す』は30~40回である。力の入れ具合の差でなく、読み物系と実務書系という性格の違いである。
 読者がつまらないと感じるとき、著者はその何倍もつまらないと感じる。そうした本ほど執筆が大変だ。例えば、いくらかマニュアルや事典の要素を備えた実務書である。書きたいことを書いているわけでなく、しかも手間ばかりかかる。話を戻そう。

私はブラッシュアップの内、最後の2~3回については、かならず話しながら行っている。講演のリハーサルを兼ねているのだ。

 講演の依頼が寄せられるかどうかは不明だが、どうせなら済ませておきたい。すると、不思議なことに仕事が入る。練習の声が届いたとしか思えない。
 読者のなかには、2~3回は少なすぎると感じる方がおられるかもしれない。それは違う。ブラッシュアップの最終段階に入ると、私は毎晩のようにうなされる。夢のなかで練習を行っている。寝言もすごいようで、私は自分の講演でしばしば起こされる。そうした回数をまったく含めていない。

営業に限らず、アマチュア(素人)を抜け出せないのは練習を軽視するからだ。

 そして、社員が練習を軽視するのは社長のせいだ。社長が本番(商談)という結果ばかりを気にし、準備(練習)という原因に無関心である。

私が見るところ、″ぶっつけ本番″で臨む営業担当者の商談は失敗の連続である。どうですかぁ~。

 4の「リハーサル徹底」は、1の「準備重視」とも、2の「プロジェクト志向」とも、さらに3の「マニュアル化」とも密接に関わる。
 以上。裏世界の荒っぽい稼ぎ手は恐ろしいほど緻密に組み立てている。

◇「売る」と「稼ぐ」
 プロセスマネジメントとプロジェクトマネジメント!

今日の営業活動は、明確な手続きと機動的な体制からなる「仕組み」にレベルアップしていないと十分な成果を収められない。

 いささかでも誤解が生じると困るので、再び述べる。私は何も読者に?非合法ビジネス″を勧めているわけでない。

業績が低迷する企業よりも彼らのほうがはるかに頭を使っている事実に目を向けてほしい。

 「爪の垢を煎じて飲む」という言葉がある。社長も、営業担当者も、結果を出せなくても本気でやり方を見直そうとしない。

稼ぐことへの凄まじい執念は見習うべきだ。

 裏世界の住人は表世界の私たちと比べ、考え抜く習慣と努力において数歩先んじる。効果と効率の観点からビジネスを科学し、しかもシステム(仕組み)として体系化する。

あえて言うなら、私が打ち込んできた「提案営業」と共通点を見出せる。企業が儲かる営業活動を探るうえで参考になる。

 ただし、詐欺で稼ぐのと提案営業で稼ぐのでは、根本的な違いがある。相手への犯罪と相手への貢献なので、精神においても実際においても正反対だ。悪に手を染めてならない。善に手を尽くす。
 詐欺では、弱者に狙いをつけ、相手の甚大な損失と引き換えに、自分の莫大な利益を手にする。手法は合理的ながら、出会いがしらの幸運に頼り、命取りになるので深追いしない。
 提案営業では、勝ち組に的を絞り、顧客の満足と自社の利益を高次元で両立させる。手続きを踏み、体制を整えながら働きかけ、成約へつなげる。そして、末永いつきあいを目指す。

結局、飽和市場では、足を用いて売れたとしても、頭を用いないと稼げない。儲からないのだ。不況期でも同じ。

 社長が「売る」と「稼ぐ」は意味も手法も異なることを理解しないと、営業担当者は長時間労働・低賃金に泣かされる。
 余談。先に紹介した「段取り八分、商談二分」は言い換えられる。
 「段取り八分、本番二分」。
 こうなると、すべての仕事の要諦に通じる。
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