御社の営業はどれほど頭で稼いでいるか③
数字を好転させるには営業の基本をやり抜け
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◇営業の学び
 前節「錆びついた営業観が予算未達を慢性化させる」に関わる話を続けよう。
 私が行ってきた公開セミナーや企業研修における共通項は何か。日程が短ければ「与える営業」のセオリーを説いた。日程が長ければ「与える営業」のノウハウを説いた。その代表格が″本物の提案営業″に関する教育指導である。

業績と企業を再生させる第一歩は、社長を筆頭としたすべての関係者が大本の考えを改め、「与える営業」に生まれ変わることだ。

 「馬鹿の一つ覚え」を大切にする私はそこにとことんこだわった。
 なお、通常営業(ルーティン)では、営業担当者が「得る営業」を行ったからといって、取り引きを打ち切られるとか、出入りを禁止されることはないだろう。顧客が「得る営業」を喜んでいるかどうかは別として…。実際、営業担当者は「顔出し?御用聞き?見積書対応」の流れで進めることが多い。
 しかし、開発営業(超ルーティン)では、営業担当者が「得る営業」まして「奪う営業」を行うと、早ければ1回目の面談で、そうでなくても3回目の面談で「もう来なくて結構です」と宣告されてしまう。幾度も通わなければ商談の成立につなげられない開発営業は、この時点で失敗に終わる。苦手意識、人により恐怖心を抱くのは当たり前だ。

数字を好転させるには、営業とは顧客に売ることでなく、顧客に役立つことだという基本中の基本をやり抜け。

 また、本にしろ、セミナーにしろ、営業をあれこれ学ぶ必要はない。たとえわずかでも優れた内容に接し、それを確実に行動へ移すことにより、自分の血と肉に変える。営業をたくさん学ぶほど実践できないことが増えていき、未消化の知識として頭に残っていく。

過剰な知識は行動を迷わせ、行動を鈍らせる。「頭でっかち」は営業として最悪の部類である。

 営業再建屋としての私の経験では、一番始末が悪い。営業に関わる知識をいっぱい持ちながら、どうしてこの程度の数字しか残せないのだろうと、私が不思議に思う営業担当者が増えている。営業の学びは、あくまで仕事を通じて行う。
 とりわけ開発営業において「与える営業」を実践するなかで学ぶことを大切にせよ。

◇企画の評価
 私が前節から述べてきたことは営業のみならず経営に、さらに仕事全般に当てはまる。例えば、経営企画やマーケティング企画、事業企画や商品企画。

企画とは、与えること。

 顧客に何を与えるかを考える。それも相手に即して考える。すなわち、こちらからあちらへ立ち位置を移すことが前提である。自社第一から顧客第一へ。私は講演などで「あっちへ行っちゃう!」と端的に説いている。

与えるとは、あっちへ行っちゃうことだ。

 これは、個人の職能開発企画やキャリアアップ企画、自己実現企画などでも同じ。

何を得るかを企てる人がいる。だから、得られなくて失望する。

 働くモチベーション、生きるモチベーションは、高さよりも持続性のほうが大事になる。なのに、自分がぐらぐらする。

大丈夫、そんな人にだれもあげない。

 私は職業柄、「企画書(提案書)」を見てほしいと言われる。私がすぐに戻すと、不満そうだ。「なぜちゃんと見ないのか」と顔に書いてある。見る価値がないからだという当然のことに、どうして気づけないのか。ほめ言葉を期待していることを知っている私は、その出来を否定したくないので口をつぐむ。
 ちなみに、仕事として受託した「企画書(提案書)評価」の有料サービスは激辛である。それは私の務めだ。クライアントもそれを望んでいる。
 しかし、普段のやり取りでは、それと異なるやさしさがあっていいと考える。ただし、ダメなものをほめるとウソになり、相手をダメにする。だから、黙って戻している。
 営業担当者がつくり込んだ「提案書」や「テレアポトーク」を私がどのように評価しているかがおおよそ理解できただろう。提案書はもちろんテレアポトークにおいても提案営業の実践が重大である。つまり、テレアポトークとは、提案営業のこと。
 成果を上げるには高度で複雑な知識はいらない。なぜなら、営業活動をやると数字が伸びるようになっている。

最大の決め手は、正しい営業活動を行うことである。

 自分は明治大学5年中退だからと、いたずらに悲観すべきでない。もう一度、言おう。どれくらい与えられるかの勝負である。

◇いいね!
 「与える営業」はさらに「人生」にも当てはまる。人生とは、与えること(←いいね!)。

人生とは、自分という「商品」の営業活動の歴史である。

 こうした認識を持つ人はきわめて少ない。営業活動いかんで自分が人生で手にする果実がまるで違ってくる。

例えば、社内営業。昇進とは、与えること。

 会社に社長に、上司に部下に、先輩に後輩に与えた結果にすぎない。地位に恵まれない人は与えていないか、与え方を外している。提案営業の実践が重大である。

例えば、学生営業。就活とは、与えること。

 この学生は当社に与えてくれると思ったとき、企業は採用に踏み切る。そうでなければ採用を見送る。提案営業の実践が重大である。

例えば、伴侶営業。婚活とは、与えること。

 この男性は自分に与えてくれると思ったとき、女性は結婚に踏み切る。男女を入れ替えても同じ。そうでなければ結婚を見送る。提案営業の実践が重大である。
こうした常識をわきまえない人がほとんどだ。

相手の関心は、自社や自分の豊かさや幸せにある。

 営業活動では何を与えられるかを考えればよい。平たく言えば、相手のことだけを語る。

就活や婚活を成功させるうえで、自己説明がもっともいけない。

 なかでも優良な企業に就職するとか、素敵な相手と結婚するには…。就活セミナーや婚活セミナーは一体全体、何を教えているのか。「与える」という原理原則を尊重しなくては、就職率も婚姻率も高められない。
 私は、本命に対する提案書づくりに個別の助言を行うことがある(就活に限る)。そもそも提案書とは、ラブレターのこと。

いかなるセールストークも自らについてでなく相手のために発する。

 例えば、テレアポや飛び込みによる新規開拓を成功させるうえで、会社説明や商品説明がもっともいけない。就活や婚活を含め、「開発営業」において己の説明は慎む。
 営業担当者の高学歴化が進んだにもかかわらず、営業話法のいろはを腑に落とせない人が増えた。提案営業は大事だが、顧客とのコミュニケーションの土台となる営業話法はもっと大事である。私は「セールストーク研修」に力を入れている。
 とりわけリレーション系の営業では、成果がおおよそ決まる。これには建売住宅や分譲マンション、クルマ、高額商品などの個人営業(BtoC営業)が含まれる。

例えば、家庭営業。結婚とは、与えること。

 私自身は既成の会社に居場所を求められなかった。それ以前に、社会からドロップアウトしていた。すべてが息苦しかったのだ。
 結果として、収入の保証のない「フリーランス」の世界でさまよった。そうしたしゃれた言葉もなかった時代である。私は企画業務の受託で生きていくしかなかった。
 結婚生活が始まっても、ほんのわずかな仕事を品質にこだわるがゆえに不眠不休でこなし、雀の涙ほどの報酬を得ていた。依頼者の満足度を高めないと、次の仕事につながらないと肝に銘じた。苦労の末に開拓した顧客との関係も一回のつきあいで終わる。
 当時は家族を路頭に迷わせないことで精一杯だった。口に入れるものを何とか確保しなくてならない。私には狩りに出かける親鳥の気持ちが痛いほど分かる。
 荒波が毎月のように押し寄せ、電気やガス、水道を止められたこともあった。「結婚とは、与えること」を現実の形にするのは絶望的なくらい難しかった。
 しかし、赤貧や締め切りの地獄のなかでも、一つの思いだけは忘れなかった。

自分は相手に何をしてあげられるか。

 互いがこの気持ちを失わないかぎり、別れは訪れない。恋人でも同じ。家計のどん底期を乗り切れた・・・。

◇人生の覚悟
 自分のことばかり気にしている人がいる。
 関心が内側に向かうと、思考が堂堂巡りをはじめ、感情がどろどろと陰湿になる。やがて不安や不信、疑念や嫉妬が膨らみ、どうにも出口を見出せなくなる。
 こうした状態が長く続くと心を患いかねない。

はっきり言って、自分のことなんかどうでもいい。放っておけ。

 自分を信じない。相手を信じる。周囲を信じる。社会を信じる。
 自社を信じない。社員を信じる。顧客を信じる。市場を信じる。

自分を食べさせてくれるのは、かならずだれかである。

 やり甲斐のより大きな仕事も、より豊かな収入も、より高い地位も、自分が与えた結果としてついてくる。これに気づけない人は不遇に苦しみ、孤立を深める。

開発営業の成果も仕事の成果も経営の成果も、そして人生の成果も、「与える」に徹したご褒美にすぎない。楽観的であれ。

 本書は『御社の営業をよくするヒント』というタイトルである。内容もそのとおりである。しかし、私が微力なのは承知のうえで、「読者に豊かになってほしい、幸せになってほしい」と願って懸命に著している。
 そもそも人生のための仕事であり、仕事のための人生でない。

人は「与えたい」と願うとき、働く覚悟、生きる覚悟が生まれる。何より心の平安が得られる。

 人は皆、豊かで幸せになるべきだ。私はそれと切り離して仕事を好きになれない。本書には『あなたの人生をよくするヒント』という祈りも込めた。

◇人間の度量
 営業活動は人間の営みそのものである。当人の「度量」が隠しようもなく表れる。

私は、営業という、この素晴らしい仕事を大勢の方々に誇り高く楽しんでいただきたい。

 なかでも社員を率いる立場の社長は営業活動を通じて度量を磨くべきだ。「営業を任せる」という社長を社員は信じてならないと、私は思う。
 社長が営業活動を死ぬほどいやと思うなら百歩譲り、自ら行わなくていい。しかし、せめて社員の営業活動についていけ。
 それを守らないと成長市場ではまだしも成熟市場では、好況期ではまだしても不況期では、会社が縮んでいく。創業者が切り拓いた販路や顧客に甘んじ、営業活動の過酷な現実から逃れる後継者を見れば容易に分かる。

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