トップは「買ってくれ」を禁句にせよ⑤
御社が掲げる「顧客第一」は大丈夫か
Copyright ©2015 by Sou Wada
 
◇営業水準の把握
 私は営業変革による業績拡大を支援しているコンサルタントである。当然ながら、営業活動は社長などの取締役に切り込むトップダウンアプローチになる。その際、たいてい社長室や応接室に通される。

多くの企業が「顧客第一」「顧客優先」といった額やパネルをかけている。

 ご丁寧に「最」を付けて「顧客最優先」としている企業もある。大丈夫?
 さて、営業努力が実ると、先方とおつきあいが始まる。まずはクライアントの営業水準をつかむために、営業担当者に同行することがある。「新規開拓」を行わせるのが一番手っ取り早く、具体的には「飛び込み」になる。
 とくに業績不振企業の社員はあからさまに嫌がる。彼らの反応を見るだけで、おおよそ察しがつく。

前年割れや目標未達が避けられないと思っても、だれも飛び込みやテレアポをやらない会社や職場がある。

 社長や上司に命じられるまでもなく取り組んで当然だろう。
 事前に知らせているにもかかわらず、営業担当者はしぶしぶ飛び込みを始める。が、いきなり会社案内を広げ、会社説明をやらかす。いきなり商品パンフレットを広げ、商品説明をやらかす。相手にまともに取り合ってもらえない。1分持てばいいほうだ。
 私は1時間くらい黙って様子を眺めている。営業担当者はどの訪問先でも同じことを行い、同じように断られている。一向にやり方を変える気配がない。

拒絶の連続で、泣き出しそうな顔になってくる。

 そこで、私は営業担当者に示唆を与える。「御社は顧客第一を掲げているよね」。「はい、そうです」。「まったくの自社第一になっているよ」。皆、ばつが悪そうだ。「顧客第一を考えてごらん。相手の対応がいくらか変わるかもしれないよ」。「はい…」。「このままだと、断られるために飛び込む状態が続くよ」。

営業担当者のほとんどが営業活動で「顧客第一」を実践したことがなく、さらに途方に暮れてしまう。


◇「顧客第一」の大ウソ!
 営業活動の実態はほんとうにひどい。会社が社会や世間に表明したこと、社長が市場や顧客に約束したことが守られていないどころか、正反対の行為が繰り広げられている。大ウソつきである。

営業現場は「自社第一」の嵐が吹き荒れている。

 立派なミッション、ビジョン、ウエイが平然と踏みにじられる現実を、社長ははたして知っているのだろうか? 営業再建屋としての私の経験では、社長が「顧客第一」を掲げる企業の大多数は、社員が「自社第一」の営業活動へ走っている。

社長が「顧客第一」を本音でなく建前で打ち出しているにすぎないことを、社員が見抜いているからだ。

 それは会社案内やホームページの気の利いた飾り物である。口先で言う分には情熱も手間も注ぐ必要がない。助かりますよぉ~。
 私が述べるまでもなく、「顧客第一」はおもに顧客へ向けて発した言葉である。自社と顧客の″接点″を担っているのは営業担当者である。したがって、彼らが真っ先に実践することが最重要となる。これに気づき、本気で取り組ませている社長はほとんどいない。その結果、営業現場は「自社第一」の無法地帯と化す。

企業にとり最重要のコンプライアンスは、営業活動における「顧客第一」の遵守である。

 恐ろしい話だが、「顧客第一」を標榜していながら、営業会議で社員の行動がそれに沿っているかという観点から検討したことのない企業が珍しくない。また、同行営業でも検証したことのない企業が珍しくない。ここでいう行動とは、大きな意味の営業行動であり、営業手法や営業話法が含まれる。顧客第一が「行動評価」になることさえ分かっていない。
 たいてい「顧客第一」を訴えているクルマメーカーを例に挙げよう。セールスマンは、顧客の幸せでなく自社のスペックばかり語っている。なぜこうした営業話法(セールストーク)になるかといえば、クルマを売りさえすればよく、相手やその家族に貢献したいという気持ちがさらさらないからだ。まれな例外を除いて…。
 クルマメーカーやカーディーラーが「顧客第一」の観点から営業行動をチェックしているとはとても思えない。販売台数や販売金額、シェア、順位しか眼中にない。

営業実態として、「顧客第一」は売るための方便になっている。


◇「提案営業」の本質
私がクライアントで「提案営業研修」を行うとなると、営業担当者はもちろん、営業管理者や社長も、商品の販売や仕事の受注のテクニックのほうに関心が向かいやすい。「提案」の仕方をとにかく教わりたがる。しかし、それは本質的な問題でない。

提案営業とは、会社として謳う「顧客第一」を、社員が営業現場できちんと実行することだ。

 これが基本認識である。ついては「自社都合」を退け、「顧客志向」に基づいて営業活動を進める。私は、営業担当者が主役である顧客を基点にし、自らの営業手法や営業話法を?客観視″できるように導いている。当人が絶えざる検討と検証を行えるなら、社長がそれほど助けなくても、営業力はおのずと伸びていく。

会社の顔となる営業担当者が「顧客第一」を具体的な行動に落とし込むことが、相手の共感と信頼につながる。

 縮小市場における生き残り・勝ち残りの大前提だろう。私は、これを社員に徹底できない企業はじり貧をまぬかれないと思う。ちなみに、クルマメーカーはどこも「自社第一」の営業活動で足並みを揃えているので、当面は大丈夫でなかろうか。
 そのクルマメーカーが「顧客第一」に本気になることがある。それは不祥事を起こしたり、バッシングに合ったりしたときだ。関係者が非常招集され、全員で「顧客第一」を誓って散会する。これがテレビなどを通じて報道されるという構図である。

社長は、営業担当者がリアルの接点で「顧客第一」を実践しないかぎり、相手にしっかりと伝えられないことを理解せよ。

 その会社や社員を儲けさせるか儲けさせないかを決めるのは、主役の顧客なのだ。

営業にとり、経営にとり、「顧客第一」がもっともおいしい。

 あからさまな言い方になってしまったが、真理である。
 社長が「顧客第一」を社員に徹底させ、現場に浸透させていれば、企業は儲かって笑いが止まらない。それをやらないお陰で、営業再建屋の私は路頭に迷わない。
 ところで、なぜ飛び込みやテレアポにともなうストレスが耐えられないくらい膨らむのか。むろん営業担当者が売ろうとするからだ。飽和市場では、営業担当者の売りたい気持ちと、営業担当者の感じるストレスは正比例の関係である。
 社長も社員もそうわきまえるなら、先に述べたつらすぎる飛び込みはかなり減る。
 念を押せば、「顧客第一」がもっとも儲かる。しかし、それを実践するには正しい営業観を土台としたうえで、相当な情熱と手間を注がなくてならない。社長の本気が問われる。

 和田創研ホームページ 和田創 library online TOP
 和田創研
copyright©2015 WADASOUKEN Co.,Ltd all rights reserved.