トップは「買ってくれ」を禁句にせよ①
御社の営業はちゃんと機能しているか
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◇売り上げ形成の状況
 「社長からご覧になり、御社の営業はちゃんと機能していますか」。
 私が営業活動や個別相談の場で尋ねると、社長はたいてい困惑の表情を浮かべ、あいまいな言葉を返す。質問の意味を理解できないのか、それとも眼中にないテーマなのか。

営業の弱さに不満を抱く社長は実に多い。だが、営業の強化に本腰を入れる社長は非常に少ない。いや、滅多にいない。

 この事実から、社長の大半が営業の強化を端(はな)から諦めていることが分かる。同時に、「結果オーライ」という本音を持っていることが分かる。

総じて業績不振企業の社長は「営業」に関心を寄せない。

 私が業績のテコ入れを引き受けるに当たりいろいろ問いかけても、社長がろくに答えられない。それでは営業の実態や実情が見えてこないので突っ込む。すると、「営業は任せている」と逃げる。自社の営業を分かっていないのだ。

社長は営業を任せてならない。業績が沈む。


 そこで、売り上げ形成の状況と照らし、自社の営業が信頼に値するかどうかについて考えることから始めよう。

◇既存業界について
 私は教育指導で、おもに東京を中心とした首都圏、新幹線沿いの主要都市の企業を訪れる。そして、挨拶代わりに営業担当者へ「売り上げはどうですか」と尋ねる。
 2005年に入った頃から明るい言葉が返ってくるようになった。「お陰さまで結構いいです」。なかには「絶好調です」。一度は失った自信を、皆が取り戻しつつあった。
 しかし、ここが考えどころだ。私は企業研修で指摘した。
 「これまでと営業のやり方を変え、それで売り上げがいいとしたら、社長は営業担当者をねぎらってほしい。営業担当者は自分を褒めてあげなさい。でも、やり方を変えたわけでないのに売り上げがいいとしたら、追い風が吹いているにすぎない。心配するな。それが止めば元に戻る。私が保証する」。

彼らは結局、「景気のお陰さまで…」と言っている。

 2008年秋に発生した「リーマン・ショック」以降、営業担当者は地獄に突き落とされた。2013年、「アベノミクス」と東京五輪開催決定により追い風が吹きはじめた。
私 は行く先々で「売り上げが伸びている」という自慢話を聞かされる。しかし、それは現象にすぎない。営業のやり方を変えることでもたらされたかどうかが問題だ。
 日本はバブル崩壊後、傾向として経済が″右肩下がり″の状態が続いた。が、そうしたなかでも好不調の波はあったし、業種や市場ならではの波はあった。

景気の変動と業績の起伏が見事に重なる企業がある。すごいじゃないですかぁ~。営業がほとんど機能していない明白な証拠である。

 こうした企業では、営業担当者が既存顧客を訪ね、顕在ニーズを刈り取るレベルに留まっている。売れた時代を忘れられない企業では、受け身の姿勢、待ちの状態に終始する。

顧客の引き合いに頼ると、売上高はその増減をなぞる。

 営業担当者の成績不振が数年に及べば、従来のやり方が無効なのだ。
 しかし、多くの社長は「営業は、叱咤激励する管理者と、奮闘努力する担当者でやっていける」といまだに考えている。
 先の個別相談でも、社長から「よく頑張っている」という精神的な話は出ても、「こう頑張っている」という具体的な話は出ない。やり方に無関心である。

◇新規分野について
 バブル崩壊後の既存業界の縮小をよそに、ITやアウトソーシング、エコロジーといった新規分野は成長を誇った。おもに広報や広告、展示会やセミナーを積極的に展開し、有望な引き合いを創出する。販売や受注はトータルな仕組みで推進するのが主流だが、営業は間違いなく弱体化する。営業担当者が引き合いを前提にした売り上げ形成しかできなくなる。

「打ち合わせ」を「営業」と思い込む社員が大多数を占める。

 引き合いを得て見込客へ出向くのは、打ち合わせの範疇である。

これに慣れ切ると、営業成果を決定づける「ストレス耐性」が備わらない。″ひ弱″なままだ。

 どんなに伸びている事業も成熟期へ移行する。どんなに売れている商品も飽和期に直面する。やがて向かい風が吹くようになり、ほどなく淘汰や再編の嵐が吹き荒れる。その際、生き残りを決定づけるのは「営業」である。

事業や商品が世間の注目や顧客の関心を集める状態は″営業の死″を招きやすい。

 「飛ぶ鳥を落とす勢い」だったベンチャーの呆気ない挫折を例に引くまでもない。
 有望な新規分野だからといって、決して楽でない。参入が相次ぎ、あっという間に競争が熾烈になる。また、画期的な技術革新がもたらされると、急速に陳腐化する。例えば、ITを駆使した販売や受注はそのための人件費の負担がほとんどなく、価格面などで断然優位に立てる。しかし、泥臭い営業活動を通じ、顧客と人間関係でつながっているわけでない。

ウェブでたやすく獲得した顧客は喪失するのもたやすい。

 環境の変化などで強力なライバルが出現しても、堅固な「営業基盤」を築いているなら、企業の消滅は免れることができよう。

◇トップは自問を!
 私は営業再建屋だが、もっとも力を注いできたのは対処でなく予防である。

営業担当者が自らの働きかけを通じ、「きっかけの創出」と「案件の育成」の2点を行えるなら、自社の営業は信頼に値する。

 これは、「商機探索」と「ニーズ発掘」と言い換えられる。この両方に取り組む習慣が根づいているのが、縮小市場をものともせずに伸びつづける「営業が強い会社」である。私の代名詞となった「提案営業研修標準講座」において最大の狙いとしたのもこれ。

日本の社長、なかでも製造業の社長は概して「営業」に冷たい。営業が機能しない最大の理由といえよう。

 営業担当者を集めて売り上げ目標を掲げ、訓示を垂れる。要は、売れればいいのだ。ゆえに営業を強化する手立てを講じない。まして教育指導に投資しない。
景気の変動と業績の起伏が重なる。私たちはバブル崩壊後に経験済みである。

気象条件で運命が左右されるフライトのようなものだ。

 気象条件がよければ、目的地(目標予算)に無事にたどり着ける。しかし、気象条件が悪ければ、途中で落っこちちゃう。コックピット(操縦室)に経営の非常ランプが点滅する状態である。
 営業はちゃんと機能しているか? 低迷を嘆く場合でない。好調に浮かれる場合でない。

業績に一喜一憂するヒマがあるなら、社長は自問せよ。「売っているのか、売れているのか」。

 ごく一握りの″勝ち組″を除き、かつて営業が売ったためしがない。いつだって景気が売ってきた。
 まことにありがたいことに、この先はトレンドとして持続的な好況をあまり期待できない。そうなると、営業担当者が売っていくしかない。
 なお、「営業が強い会社」になるかどうかは社長次第であり、その条件は2つである。

「営業への深い愛情」と「営業への正しい理解」を持つこと!

 業績不振企業では、前者はまだしも、後者ができている社長はほとんどいない。
 本書は、営業の仕事に対する正しい理解を促す内容を多く含む。すなわち、結果を出せない営業の″全否定″である。
 私が行う個別相談に、数字の悪化に青ざめた社長がしばしばやってくる。私はおのずと営業について厳しい指摘を行うことになる。すると、耳を疑う言葉が返ってくる。
 「先生、そうおっしゃいますが、うちの連中は結構、頑張っています」。

社長が結果を出せない営業を認めてしまったら、業績は終わる。

 子どもでも分かることが分かっていない。どうですかぁ~。

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