第8講◇<STEP6>
提案書の作成と仕上げ
Copyright ©2015 by Sou Wada
 
 営業マンが具体化した内容、設計したシナリオに従い、提案書を作成して仕上げるステップである。商談が成立するかどうかは、提案書の出来により左右される。顧客への説得力が増す要諦を押さえ、商談を有利に進めよう。
この記事は、私が「提案営業研修」で用いてきた事前課題図書に収めた原稿です。私の営業本の第一作『提案営業成功の法則』(日本実業出版社)に若干の増補を行ったものです。 1996年の刊行から相当な歳月が経ちましたが、いまだに通用する内容です。「提案営業」に関する基礎知識が得られると考えて掲載しました。
1.共通言語と試金石の役割
 提案営業はそもそも大変である。提案書の作成に思いのほか手間を取られるうえ、その大半は出来が悪い。したがって、商談の成功率がさほど上がらず、費やした労力に見合わない。提案営業を実践しようという意気込みも早晩冷めることになる。
 提案営業の最重要ツールとなる「提案書」を作成する具体的な方法は、第6講で詳しく解説した。提案の内容の具体化の手順と、提案書の構成を一致させることが効率的である。本講では、提案書と提案書作成について知っておいてほしい事柄を補足説明する。
 提案書とは、提案内容を表現したものだ。その役割は2つに大別できる(図8-1)。


(1)“共通言語”として
 顧客だけでなく、自社を含めて提案に関わる全員が提案内容を理解する“共通言語”としての役割がある。提案書にまとめることで関係者を目指す方向へ動機づけ、商談の第一歩を踏み出せる。提案営業の実践に不可欠のコミュニケーションツールである。
(2)“試金石”として
 提案営業を成功へと誘導する“試金石”としての役割がある。提案内容は頭のなかで考えるだけでは十分とはいえない。提案書にまとめることで提案内容が磨きあげられ、商談の成功率が高まる。提案を受け入れてもらううえで、提案書作成は営業マンが乗り越えなければならないハードルである。
 提案書は、顧客が提案の採否を判断するほとんど唯一の目安となる。何といっても提案内容を伝達し、最終的に顧客を説得する役割が重大である。

2.提案書の効用はさまざま
 私は、提案営業に提案書は不可欠だと考えている。提案書の効用を思いつくままに述べてみよう(図8-2)。


 営業マンは提案営業の実践を通じて、顧客のベネフィットに直結する知恵の体系を提供する。それは文面にすることでありがたみが増す。顧客のほうも耳で聞くだけでは、提案を受けているという実感がさっぱりわかない。
 営業マンの口頭による伝達は、提案内容に関する思い違いが生じやすく、受け入れ後のトラブルにつながる。また、提案書があれば、営業マンも顧客も互いに頭の整理が可能になり、記録として保存できる点もありがたい。
 顧客は提案書に基づき、提案内容を大勢で検討したり、客観的に評価することができる。さらに、自社にとっては「成功事例」として共有し、全員が多方面に利用することができる。いわゆる“水平展開”である。

3.提案書作成のポイント
 提案書を作成する際のポイントはいろいろあるが、突き詰めていくと「分かりやすく魅力的に」に集約される(図8-3)。


(1)分かりやすく
 提案書の分かりやすさはきわめて大事である。私は公開セミナーや企業研修の講師を務めており、参加者が作成した提案書に対する意見や評価を求められる機会が多い。
 そこで一番返答に窮するのは、目を通しても理解できない提案書である。出来の善し悪しを論ずる以前の問題だ。 分かりやすさは、まず顧客への思いやりである。顧客は提案内容をすんなり理解したいと望んでいる。
 分かりやすさは、同時に自らの提案への愛情である。分かりにくい提案書では顧客の説得は覚つかず、営業マンの努力も無に帰してしまう。分かりやすさを徹底して追求する姿勢が、提案の受け入れを円滑にする。
(2)魅力的に
 営業マンが顧客志向に基づいて考えた提案内容をできるだけ魅力的にまとめる。顧客の関心と共感を最大化するわけである。むろん、提案内容そのものが顧客にとって魅力あることは当然だが…。
 これを言い換えれば、提案書作成では提案内容の魅力を伝えることがもっとも大切であり、そのためには分かりやすさが前提になると考えてほしい。営業マンは「分かりやすく魅力的に」と呪文を唱えるように取り組むべし。

4.分かりにくさの原因と処方
 私の指導経験に基づき、提案書の分かりにくさの原因と処方を考えてみよう(図8-4)。提案内容が不明確か、文章力が不足かのいずれかが主因になっている。


(1)提案内容が不明確
 提案内容がまだ固まり切っていない場合である。これは営業マンが必要な時間を確保し、ねばり強く考え抜くことによってしか解決できない。
 あとは実戦経験を積み重ねることである。ごく短い時間で提案内容を固める勘どころがやがて会得できるはずだ。
(2)文章力が不足
 営業マンの文章が下手でさっぱり要領を得ない場合である。これまでに文章表現の習慣がないため、これが実に多い。
 そこで、明解な文章を書けるように日常的な訓練を行う。新聞のリード記事を1日1本書き写す作業を1~3カ月くらい継続する。毎日わずか5分足らずだが、ビジネスコミュニケーションに必要な最低限の文章力が身につく。
 リード記事は読者がそれに目を通せば、本文記事をわざわざ読まなくても概要が把握できるように「5W1H」で書かれている。なお、書き写す紙面は、政治、経済、社会、国際、文化、生活という具合に毎日変えたほうがよい。ところが、実際にはそれでもダメだという人が出てくる。それならもう無理に文章で書こうとしない。何も自分が苦手な部分で勝負する必要はない。
 私は提案書作成に長らく四苦八苦していたが、ある時点から文章スタイルを放棄して、全面的に「箇条書き」に切り替えた。提案書作成にさほど苦痛を感じなくなったどころか、顧客にも簡潔で理解しやすいと好評である。


 さらに、箇条書きにすることで思いがけない効用があった。①、②、③と番号を打って記述すると、人はどうやら無意識のうちに一定のルールに沿って並べる傾向があるようだ(図8-5)。おのずと頭の整理をしていることになる。
 とりわけビジネスコミュニケーションでは、長文よりも短文のほうがずっと評価が高い。営業マンは提案書に箇条書きを積極的に取り入れよう。文章はすべて読み終えたところで、ようやく内容を理解できる。箇条書きでまとめたために、顧客への説得で不利を感じることもない。

5.提案書の文面だけで評価
 提案書の提示では口頭による説明が普通である。その場で営業マンの熱意を表明することができる。しかし、いったん手を離れると、提案書の文面だけで提案内容は評価されると肝に銘じなければならない。
 最近、提案書の“独り歩き”を実感する出来事があった。提案書の提出から承認までの間に1カ月以上を要し、稟議の過程で見事にいくつもの判が並んだ。顧客先の企業が巨大になり組織が複雑になるにつれ、こうした事態は珍しくない。商談の規模が大きくなっても同様だろう。営業マンの努力が報われるかどうかは、提案書の出来次第といえる。

6.提案書の説得力を増す要諦
 提案書の作成では、ここを押さえれば説得力が増し、商談の成功率が高まるという要諦がある。すでに解説した提案書の3部構成もその一つである。ここでは提案書の作成における要諦を紹介しよう(図8-6)。
(1)首尾一貫
 提案書を仕上げる際には、提案内容の首尾一貫にどこまでもこだわる。説得力は、論理の筋を通すことによってしか生まれないからだ。
 営業マンは論理を着実に積み重ね、顧客にうなずきぐせをつけることである。とくに提案書の左側に当たる「論理化部分」において、現状、目標、課題の各欄で顧客の「イエス」を一つずつ取りつけよう。これで提案の受け入れは、半ば決定したも同然である。


(2)顧客の言葉
 提案の場で顧客が思わず身を乗り出す提案書とは一体どのようなものだろうか?
 営業マンはこれまでに訪問や面談を通じて顧客とコミュニケーションを深めてきた。そこで顧客の言葉に耳をよく澄ませてほしい。会話のなかでたびたび登場する言葉、顧客がとくに強調する言葉に気づく。これがキーワードであり、決して聞き逃してはならない。
 提案書の作成では、要所に顧客の言葉をかならず取り入れる。営業マンの説明に、顧客は我が意を得たりという表情をするだろう。何となれば、それは顧客のお気に入りの言葉だからである。顧客を絶対にウンと言わせる極意であり、商談の成功率が劇的に向上すること間違いなしである。
(3)担当者の支援
 営業マンからの提案を受け入れることで、担当者の社内評価が高まることが決め手だ。
 提案が受け入れられるように社内を調整してくれるのは、やはり担当者である。営業マンは担当者の環境づくりを支援しなければならない。さらに、担当者と末長くつきあい、その昇進に貢献するくらいの気概を持ちたい。
 担当者が提案を受け入れて社内評価が高まり、昇進する。昇進すれば決裁権が大きくなり、より規模の大きい提案を受け入れてもらえる。この繰り返しこそ提案営業の醍醐味といえる。顧客先の企業の繁栄はもとより、担当者の幸福を目指そうではないか。私が常日頃、提案営業では営業マンと顧客は“運命共同体”であると説くのもそのためだ。
 日本の企業では依然として合議決裁が根強い。だから、提案書は会議資料として利用されることを想定して作成する。顧客が希望するなら、提案書の提出先を削除し、提出者は担当者の名前とする。つまり、担当者が作成したことにする。
 提案の場でそれなりの手応えがあったら、営業マンは担当者へ問いかけよ。「もしよろしければ、名前を変えさせていただきます」。むろん提案内容が優れており、提案書の出来が素晴らしいことが前提である。
 顧客が「すまないけど、そうしてもらおうか」と答えたとする。営業マンが「はい、承知しました」と自社に戻り、表紙を取り替えるようでは話にならない。アタッシュケースのなかには、あらかじめ提出者の名前を変えた提案書を用意しておきたい。
 私は、顧客が使用するOA機器やソフトウエアが分かった場合、それに合わせてフロッピーを提供することがある。それぞれの企業には慣行とする用語があり、人には使い慣れた言い回しがある。担当者が自由に修正できるように…。大きな商談を決めようとする営業マンには、このくらいの細やかな配慮がほしいものだ。

7.顔としての表紙の作成方法
 提案書とは、顧客に対する営業マンのラブレターである。私からあなたへ、当社から御社へ差し出すものであり、記名が原則となる。そして「表紙」は記名が可能な唯一のページである。たとえ1枚の提案書であっても、表紙を省いてはならない。
 表紙は、提案書の顔として印象面で大きな影響を与える。営業マンは魅力的な顔づくりを目指し、顧客が手に取りたいという気持ちにさせることだ。それでは表紙の作成方法について、フォームに基づいて説明しよう(図8-7)。



(1)提出先
 顧客の正式名称を記す。「**御中」とする。企業名だけでなく、部署名まで記すことがある。また、株式会社が前か後かに注意を払う。㈱はカッコを開いて「株式会社」とする。ビジネスレターの表書きと同様である。ここでの誤字は致命症であり、確認を決して怠らない。なお、重要な提案書では表紙の右肩に「マル秘」などとする。
(2)提案書タイトル
 提案の趣旨を正確かつ簡潔に記す。趣旨をより具体的に訴求したり、提案内容への期待感を高揚させたいなら、キャッチフレーズやサブタイトルを添える。
(3)提出日
 西暦で記すか元号で記すかは、提出先の慣行に合わせる。例えば、官公庁に提案するのであれば、先方の指示がなくとも元号表記とする。また、年、月、日のどこまで記すかも留意する。
(4)提出者
 やはり企業名に加えて、部署名を記すことがある。和田創研の場合、さらに個人名を併記している。提案営業では、営業マン個人をアピールすることが先決との判断からだ。所在地、電話、ファクスも1行にして、表紙の下部に小さく流す。顧客が営業マンに会いたくなったら、いつでもラブコールを送れるように…。
(5)ビジュアル
 提案の趣旨に合致したビジュアルを入れるのも一法であり、表紙の訴求力を豊かにする。写真やイラストはスキャナで読み込んだり、コピーして貼り込む。ページ数の少ない提案書ではビジュアルの代わりに「目次」や「はじめに」を入れることがある。
 はじめには、提案書の序である。提案内容への期待感を増幅させるとともに、本文ページへの移行を円滑にする。目次は、顧客が必要とするページを素早く検索する際に役立つ。
 表紙の作成では、これらの基本的な要素をしっかり押さえたうえで、営業マンが演出を工夫しよう。あるいは、顧客の嗜好や慣行を調べて、それに沿ったつくり方を心がける。なお、文字の大きさと書体を大胆に変えると、表紙全体に強いメリハリがつく。

8.提案営業のケーススタディ
 「提案内容」のフェーズの締めくくりに、提案営業の「事例」について学ぼう。ある中堅営業マンが作成した提案書に則して、提案の背景と趣旨、提案営業の進め方を解説する。提案書の実際に触れてまとめ方を参考にするのが、上達の近道である。商談での絶大な威力をぜひ感じ取ってほしい。
 さて、K社は、1986年に設立されたセキュリティサービス会社で、従業員は現在80名を数えるまでになった。この分野ではもちろん後発であり、通常のやり方では先行する大手企業に埋没してしまい、市場での競争に勝ち目がない。そこで、当初から役員が先頭に立って、顧客との商談に「提案営業」を取り入れ、ライバルと差別化を図ってきた。
 また、同社の商品だが、3年前に開設した東京営業所では、セキュリティサービスに関連する企業と積極的に提携して、広範なネットワークビジネスを展開している。最近は、特定エリアで独占的にセキュリティ商品を取り扱うなど、競争力を着実に強化しつつある。
 この事例は、8棟の賃貸マンションを所有するオーナーO氏が自ら経営する街の不動産屋W社が顧客である。
 景気の低迷が長引き、周辺に大型の新築物件が完成するなどの悪条件が重なり、W社は入居率が年々低下している。契約更新時に家賃の値上げを見込めないどころか、新規募集では家賃の引き下げに追い込まれがちである。それでも入居者探しに四苦八苦している状態だ。会社組織といっても、実態は個人経営に近いO社長はかねてより頭を悩ませ、何とか収益を改善できないものかと思案に暮れていた。
 同社の中堅営業マンKさんは、テリトリー内のおもな不動産屋に飛び込み訪問を敢行した際に、有望な見込客となるW社のO社長に出会ったのである。
 同社は商品に自信を持っているが、営業マンがアプローチの段階から急いで“売り込み”に入らないよう、全員でとくに注意している。Kさんも売りたい気持ちをぐっと押さえ、まずはヒアリング主体の情報収集に徹した。あせっても商談が進まないばかりか、数少ない見込客を失うのが落ちである。
 ここで、Kさんが顧客との商談のために作成した「ご提案概要」にざっと目を通してほしい(別紙)。Kさんは、初回訪問のやりとりで得たわずかな情報を手がかりに、これまでの営業経験で培った自身のノウハウも生かしながら、W社に関する仮説を立ててみた。そして、あくまでも第1回目の打ち合わせ資料として提案書にまとめ、O社長への気軽な“おみやげ”という感じで持参した。
 ちなみにKさんが提案するのは「賃貸マンション管理支援システム」である。O社長が所有する8棟の賃貸マンションの警備と管理を一括で同社に委託してもらうことで、管理業務の効率化と管理水準の向上につなげるという内容である。それによって安全面を中心に物件の付加価値も高まるから、適正家賃の確保と完全入居の達成が可能になる。
 Kさんはこの提案書をもとに、O社長からもっと突っ込んだ情報を引き出し、顧客ニーズの探索に役立てた。その後もいくどか訪問して、提案内容の細部に渡る打ち合わせを重ねた。途中、提案書の要所に顧客のお気に入りの言葉を取り入れるなど、歓心を買う工夫も怠らなかった。こうしてKさんはO社長と信頼関係を深めながら、そのニーズを提案書に十二分に反映させて、とうとう承認を取りつけた。

9.提案書を客観的に評価
 ここで、提案書の「採点基準」について触れておこう。自分が作成した提案書が果たして商談で通用するのか、だれもが気になるところである。顧客へ提示する前に、その効力を客観的に点検するモノサシがあれば便利だし、はなはだ心強い。
 そのためには、提案書の採点基準を細分化して設け、それに従って評価するのが妥当である。私が普段使用している「提案書採点表」のフォームを掲げてみた(図8―8)。これならどの業種や商品の提案書にもある程度は適用できそうである。3グループ、15項目の採点基準について、順を追って説明するとしよう。



(1)商談グループの採点基準
 商談の観点から提案書を評価するわけで、営業マンが顧客に提案する内容自体の実質的な価値を問う。商談が最終的に決定するかどうかは、ここ次第といっても過言ではない。3つのグループのなかで、もっとも重視されるべきである。
①独創性:提案内容そのものにオリジナリティがあるか。従来の商談と比較して、そこに新しい切り口や工夫が認められるかを検討する。なお、独創性の評価が高いと、商談で顧客の食いつきがいい。
②優位性:この提案内容で、自社がライバルに対して優位に立てるか。ライバルの追随や模倣を許さないという「排他性」を含めて検討する。なお、優位性の評価が高いと、商談で顧客の値引き要求に泣かされなくてすむ。
③展開性:提案内容をそのまま展開できる顧客がどれだけ存在するか。提案が可能な顧客の最大数を検討する。なお、展開性の評価が高いと、商談で容易に使い回しできるため、提案書作成の負担が軽くなる。むろん顧客に応じて、若干の手直しが必要になるわけだが…。提案書はラブレターという本質と矛盾するようだが、現実のビジネスではこうした合理的な考え方が大切である。
④付加価値:提案の受け入れにより、自社が獲得する利点や成果が大きいか。商談が成立したら実現する“自社利益”を推測すればよい。なお、付加価値の評価が高ければ、それは自社にとってぜひとも決めたい商談であることを意味する。
⑤ベネフィット:提案の受け入れにより、顧客が享受する利点や効果が大きいか。商談が成立したら実現する“顧客利益”を推測すればよい。なお、ベネフィットの評価が低ければ、そのまま提案書をぶつけたところで徒労に終わる。顧客の失望や冷笑を買うのが落ちであり、営業マンは提案内容を徹底的に再考すべきだ。実は、このベネフィットが商談の成否をもっとも左右する。④と⑤の採点基準が両方とも高得点なら、商談として申し分ないだろう。
(2)構想グループの採点基準
 構想の観点から提案書を評価するわけで、営業マンが顧客を説得するシナリオの組み立て方を問う。商談の場でセールストークを力強く展開できるかどうかは、ここにかかっている。
⑥論理性:提案書の「論理化部分」に注目し、論理の流れがスムーズか、論理の整合性が保たれているか。そして、論理化部分の「課題」に対する答えとして、「現実化部分」が提示されているか(課題と現実化部分がきちんと照応しているか)。さらに、提案内容の全体に渡り、論理の筋が一本通っているかを検討する。論理化部分の「目標」と「課題」に言葉のダブリがあると、論理が停滞したり逆流しかねない。顧客の説得に支障を来すことになるので、とくに注意を払おう。なお、論理性の評価が高いと、商談の場で顧客にうなずきぐせをつけやすい。
⑦現実性:提案書の「現実化部分」に注目し、「内容」が実現可能であるか、「方法」が明確になっているか。方法には、方式、仕組み、手順、段取り、日程などを含める。つまり、提案内容がそのまま実行に移せるレベルに達しているかを検討する。なお、現実性の評価が高いと、商談の場で顧客がすぐに検討してくれる。
⑧裏づけ性:提案書の「裏づけ部分」に注目し、客観的なデータが過不足なく盛り込まれ、提案内容の正当性や有効性を証明しているか。つまり、提案の“保証書”として、顧客に信頼と安心を与えているかを検討する。現実化部分の「内容」と「効果」だけでなく、論理化部分の「現状」や「目標」を裏づけることもある。なお、裏づけ性の評価が高いと、商談の場で顧客が決断を下しやすい。
(3)表現グループの採点基準
 表現の観点から提案書を評価するわけで、営業マンが顧客に対して提案内容を理解させる確かさの度合いを問う。その意味で、(1)商談グループと(2)構想グループの評価を支える土台に相当し、商談を成功へ導くインフラといえる。
⑨表紙の魅力:提案書の顔として、顧客の関心を喚起し、食欲を刺激するか。営業マンの説明をぜひ聞いてみたいと思わせる魅力があるかを検討する。提案書の題名はメーンタイトルのほか、キャッチフレーズやサブタイトルで構成する。提案の趣旨を端的に伝えるだけでなく、提案の目標や効果を積極的に打ち出しているか。文字の大きさと書体を変え、紙面にアクセントやリズムを演出しているか。また、余白スペースに写真やイラストなどを盛り込んだり、序文をうたい込むといった工夫が見られるか。実際、表紙はプレゼンテーションで重大な役割を果たす。顧客の第一印象となり、提案内容そのものの評価まで変える力がある。
⑩分かりやすさ:提案書の文章が日本語として整っていて分かりやすいか。顧客が提案内容を正確かつ円滑に理解できるかを検討する。もちろん用字や用語などの表記に誤りがないかも点検する。営業マンの説明とは別に、提案書自体で意味が完結していることが大事である。そのためには文章がすっきりまとまっているとともに、かなりていねいに書き込まれていなければならない。
⑪内容の整理:提案内容を明確に整理したうえで、それを適切な欄に記入しているか。提案書のなかに合体したり、分割したり、移動したり、順序を入れ替えたほうがいい部分や箇所がないかを検討する。こうした難点が目立つ提案書では、顧客が自分の頭を十分に整理しきれない。
⑫要点の強調:内容の整理に基づき、それぞれの部分や箇所を的確に要約し、見出しを立てているか。顧客が提案書を眺めるだけで、要点をざっくり把握できるかを検討する。見出しは20字くらいが適当だが、あまり短すぎては意味が浅くなる。文体を統一し、体言止めにすると力強い印象を与えられる。また、提案書の「論理化部分」だけでなく、全体に渡ってこまめに設ける。見出しは本文の理解をおおいに助けるものだ。
⑬細部の詰め:要点の強調と照応させるかたちで、細部を掘りさげて説明しているか。提案内容をディテールまで考え抜き、それを詳しく書き記しているかを検討する。なお、⑩~⑬の採点基準が高得点なら、顧客がそのまま稟議書や会議資料として利用できるため、提案の受け入れに向けてキーマンへ根回ししたり、社内を調整しやすい。つまり、営業マンの説明を離れ、提案書が独り歩きしても大丈夫な状態である。
⑭レイアウト:文章をまとまりとして眺めたときに、読みやすく整っているか。それには文字の大きさや書体の変化、文章の位取りがおおいに関連する。また、文章群の配置はバランスが取れているかも検討する。文章の長さに極端なバラツキがあると、レイアウトが崩れる。
⑮ビジュアル化:多彩なビジュアル要素を駆使して、顧客に提案内容を印象深く伝えているか。例えば、数値はグラフ、仕組みはフローチャート、スケジュールはガントチャート、商品は写真やイラストで提示するといった具合である。提案書にカラーを加えると、一層鮮烈なインパクトを与えられる。なお、ビジュアル化の評価は、パソコンを使いこなせるかどうかでまったく変わってくる。ブラインドタッチは当然の素養として、プレゼンテーション系ソフトの操作に習熟したい。

10.採点結果を踏まえて手直し
 提案書の採点方法と採点結果について若干補足しておこう。商談グループの各項目は10段階で採点し、小計の満点は50点になる。構想グループと表現グループの各項目は5段階で採点し、小計の満点はやはり50点になる。そして、2つの小計を加え、提案書の最終評価とする。したがって、合計の満点は100点になる。
 営業マンは作成した提案書を、この表に基づいて自ら採点してほしい。何の基準もなく漫然と眺めるよりは、評価がかなり正確になる。職場の同僚と相互に採点し合うことで、評価は一段と厳密になる。競争心が刺激されるから、提案書上達の励みにもなるはずだ。
 提案書を採点した結果、得点が高ければ、営業マンは自信を持って商談にのぞむことができる。また、得点が低くても、全面的もしくは部分的に手直ししたうえで、やはり自信を持って商談にのぞむことができるだろう。
 なお、この採点表は、私が企業でのコンサルティングや研修で、提案書コンクールの審査に当たる際、公正さを期すために開発したものであることをつけ加えておきたい。ここには単なるコンクールで終わらせず、提案営業の確実な実践につなげるよう、営業マンやその上司が進捗状況を5段階で管理できる工夫を施している。

  和田創研ホームページ 和田創 library online TOP
 和田創研
copyright©2015 WADASOUKEN Co.,Ltd all rights reserved.